道路構造物ジャーナルNET

①現場で手本を見せることの大切さ

失敗から学んだコンクリート打設

株式会社ファインテクノ
調査計測部
マネージャー

平瀬 真幸

公開日:2022.12.16

3.現場で手本を見せることの大切さ

 前述したのは、私が施工者現場監督として失敗した事例でしたが、ここからは私が綺麗なコンクリートをある程度構築できるようになった後、発注者支援業務で施工者と試行錯誤しながら成功した事例となります。
 コンクリートは綺麗であるほど良いと思うのですが、そのようなコンクリートを意図して構築する施工者を見る事は少ないと思います。その理由について考えますと、現場でコンクリート打設の指導・監督するはずの元請さんや下請職長も手本を見せる事がほとんどありません。作業する方々は専門職なので、現場監督が手本を見せるのは難しいでしょうが、打設現場をつぶさに観察しながら、示方書などに従った時の結果を見て、現場にマッチしていたかどうか確認する事はできるでしょう。そこで結果が悪ければ、示方書と現場で前提条件が違うのではないか、別の工夫が必要ではないかと創意工夫につながればさらに気付きがあったりして、そのような経験を続ける毎に成功体験が積み重なり、自信を持って指示が出来るようになっていくはずです。

 座学で考える事は大切ですが、それに加えて現場で動いて確かめると結果が理解しやすく早く身につくと思います。また、コンクリート打設当日は気象・材料・作業員技量・作業人員・使用器械などを考慮しながら指揮する総合力が試されます。言葉や文章にできない事を肌身で感じられ、スランプロス等へ臨機の対応が要求されたりと緊張感を伴う事もありますが、対応した事により知見を得ることが容易となりPDCAサイクルを回しやすくなるので私は現場を大切にしております。
 ここで紹介します写真ですが、同じ工事、同じ元請けさん、同じ協力業者で施工がなされております。

 当時、私が発注者支援で配属された広島県西部建設事務所廿日市支所の現場において、県職員の山本参事と現場視察した時の話です。設計スランプ5cmのはずが、現場ではスランプを上限要求したような軟らかいコンクリートが打込まれておりました。軟らかいコンクリートは、充填は容易ですが締固めを丁寧にすると材料分離する事から、硬いコンクリートを徹底して締固めるようお願いしたところ、「硬いコンクリートはジャンカが生じて綺麗に仕上がらない。丁寧に締固めると材料分離が生じるとの指摘もある」等々の反対意見が出されました。

 いただいた意見について、経験からなる根拠を示し、まずこの工事では水みち・ジャンカ・沈降クラック等々の不具合はスランプ上限要求した軟らかいコンクリートで生じている事を指摘しました。通常、「硬いコンクリート=ジャンカ・アバタのリスクが高い」と思われています。軟らかいコンクリートは充填が早くて巻き込み空気が早く排出されますが、写真にあるようにたくさんの不具合が生じ易くなります。逆に硬いコンクリートは充填に時間がかかるものの、空気が出なくなるまで締固めるとなると、綺麗に仕上がり材料分離も生じにくい事について写真等を使って説明しました。

硬いコンクリートによる品質向上

 最初は、硬いコンクリートを打込む事に強い抵抗を受けましたが、締固めの実演や指導をしたりコンクリート打設のある日に合わせて何度も現場へ立ち寄って会話している内に、少しずつ意見を取り入れていただけるようになりました。

 それからすぐ結果があらわれ、施工している皆さんにも品質改善が肌で感じられるようになり、皆さんから「今まで経験の無い綺麗な仕上がりだ、どうやら硬い方が結果が断然良いし、軟らかいコンクリートは簡単で楽だけど不具合だらけでこれからは使えないですね」と言ってもらえるものとなり、当然ながら不具合は根絶できました。その時に、私からも現場責任者と作業員の皆さんに「素晴らしいコンクリート、こうした密実なコンクリートは半永久的に地域を守り続け子々孫々に伝えられると思います」と褒め称えるとともに、事務所に帰り県の山本参事に報告しました。
 後日、広島県西部建設事務所廿日市支所の長谷川支所長・山本参事より見本となる現場として視察を受けた事も施工者のモチベーションが高まる事になりました。
 この年度において、廿日市支所内限定で品質向上施工者の表彰が実施され、紹介した関係者が対象となり、とても嬉しそうでした。改めて、施工者:(株)ドプコ松尾所長、協力会社:枠工業清木社長に心から御礼申し上げます。また、表彰式で(株)粋工業清木社長から「こんな名誉な事は今まで経験がないので賞状を会社に飾ります。コンクリートの現場があったら全国どこでも行くのでお声がけください、またご指導お願いします」と言われ、とても嬉しく思いましたし、その後もお世話になる事になりますが、それはまたの機会に紹介させていただきます。最後に、このような品質向上の表彰式を開催して下さった、発注者広島県西部建設事務所廿日市支所の長谷川支所長並びに職員の皆様に感謝申し上げます。この取組みが今後も継続され、さらに発展を遂げ、いつか【広島方式】なるものが展開される日がくる事を願っております。

 次回、何を書くか定まっておりませんが、近日更新できるよう執筆させていただきます。

(次回は2023年1月に更新する予定です)

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