道路構造物ジャーナルNET

①現場で手本を見せることの大切さ

失敗から学んだコンクリート打設

株式会社ファインテクノ
調査計測部
マネージャー

平瀬 真幸

公開日:2022.12.16

1.はじめに

 今回は、いつも拝見させていただいております道路構造物ジャーナルNETさんから執筆の依頼をいただきました。このような機会をいただき感謝申し上げます。
 私の職歴について簡単に述べさせていただきますと、施工会社で20年、発注者支援業務で9年程度、今はコンクリートの品質改善に関するコンサルティングや透気試験等の業務に携わっております。施工会社では専門と言える程の経験は少ないのですが、強いて言えば空港工事は専門と言って良い時期がありました。専門が少ない理由については、学校を卒業して官工事に携わった時、現場より書類と言う風潮に、せっかく学んだ土木工学を生かしたかった事から、国家資格を取得しなければ現場主体の民間工事ばかり行けるものと考え、座学も好きでは無かった事もあって資格を取得してこなかった経緯があります。しかし、年を追う毎に景気は悪化し資格が無くて済む現場は少なくなった事から仕方なく資格を取得しました。そこでたまたま巡ってきた現場が空港工事で、四苦八苦しながらも何とか切り抜けた事から空港へ多く行けるようになったと言うものです。また会社も転々としておりましたので小型の工事が多く、華々しい活躍はして来なかったと言って良いかと思います。
 この度は身の丈に合わない事もあって、読んでくださる皆さんがどう感じられるか見当もつきませんが、ここでお話できるのは私の経験則がほとんどです。私個人の失敗から反省があって、正しいか分りませんが自分なりに仮説のようなものを立ててそれを現場で検証してきました。その経験から導き出した答えみたいなものを積み重ねながら、いつか正しい方向で成果を得られると信じて行動しております。当然一人では出来ない事ですので、元請さん・協力業者さん・生コンプラント・発注者等で力を合せた日記の紹介と言ったものです。
 よって、個人の独り言だと思って読んでいただけると助かります。

2.加水 「平瀬君、軟らかいコンクリートはあまり良くない」

 私は学生時代、材料工学だったでしょうか、コンクリートについて学びはしましたが、それについて良く理解できなかった事、躯体工事は優秀な人材が携わるものと思い込んでいた事もあって、コンクリートについて真面目に勉強せず就職に至りました。躯体工事は大手ゼネコンの分野だから自分に関係無い、例え自分にお役が回っても小構造物だからどうにかなるだろうと言う勘違いです。思惑は一部で当たり、就職先でも本格的な躯体工事はほぼ経験する事なく小構造物ばかり施工していました。当時は、ひび割れ・ジャンカなどの不具合は、あまり問題になる事がなく、発注者が指摘しない限りは目立たないよう勝手に補修するのが当たり前、そんな状況でしたので困る事もありませんでした。さらに生コン打設では施工のしやすさやポンプが詰まらぬようスランプの上限要求も日常的だったのです。
 そんな若かりし頃、コンクリート打設の現場で人が全く足りない状況で、無理矢理集められた土工さんは全て祖父・祖母の年代に当たる方々という日のことです。コンクリート打設開始と同時に、世話役の方から「コンクリートが硬いからジャンカが出来るし作業もはかどららない。水を入れて欲しい、できないならすぐ帰る」と強く言われたので慌てて加水しました。これを見ていた職長さんに「平瀬君、軟らかいコンクリートはあまり良くないと言われているから、出来るだけ水を入れない方が良いよ」と優しく注意されたのですが、上司も他業者も当然のように加水していた事と、作業員の体力から加水しなくては打設が難しいと考え、その時は苦笑いで済ませてしまいました。

 しかし、職長さんはどうにかコンクリートの良さを分って欲しかったのでしょう。その後の施工で硬めのコンクリートを職長さん自ら丁寧に締固め、脱枠した時の事は今も忘れられません。美しく輝いたコンクリートを見ながら「ピカピカ黒く光って綺麗じゃの~、綺麗なコンクリートは気持ち良いじゃろう、どう思う」等々感慨深げに言われたのです。この時、ことの重要性が分らずに軽く相槌を打ちましたが、あの時、なぜ一言御礼を言えなかったのか、30年経った今でも当時の事が鮮明に思い出されます。その時の写真は残っていないのですが、頭に残っているイメージに近い状況を他工事の写真を借りて紹介します。今更ながら職長であった小林さん、ご指導ありがとうございました。

打設当日にひび割れが発生
 ひび割れから生繁ってしまった立派な雑木

 前述の現場が終わって1年後、若輩者の私に造成工事で調整池の管理道路コンクリート工事が回ってきました。快晴炎天下での施工でしたが、路盤紙も敷設せず、ただ作業員と一生懸命打設したコンクリートは、打設当日にひび割れが発生する事になります。この時、初めてコンクリートで大失敗したと自覚し、反省するとともにコンクリートの恐ろしさを知る事となりました。知識不足であるのに教科書すら見ておらず、発生したひび割れに猛省する事となり、今回の執筆にともない30年程度経過した今の状況を確認してきましたが、大きなひび割れからは立派な雑木が生い茂っており、恥ずかしくもあり、この経験はずっと忘れないと思います。

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