5.高架橋を5日で施工するプレキャスト化の検討2)3)
鉄道高架橋は、柱と梁とスラブの組み合わせが中心で、同じような形状の、少ない部材の組み合わせで成り立っています。柱や梁の寸法をできるだけ統一することで、プレキャストのメリットが出しやすい構造形式といえます。部材を運搬して現場に持ち込むということを想定して検討した結果を以下に紹介します。
運搬するために部材の長さは12mまでとし、あまり大きなクレーンを使わないで済むように部材の重さは20tを上限として検討しました。施工条件が厳しい現場で、施工場所は民家や既設鉄道に挟まれた場所を想定しています。図-13がそのような条件下での高架橋の図です。
杭から上の柱、梁、スラブを、1高架橋5日で施工する検討をしています。週休2日で1週間での施工が可能と考えています。
図-13 プレキャスト部材の重量および寸法の前提条件
柱と基礎の鉄筋継ぎ手は鋼管内の重ね継ぎ手としています。柱から飛び出した鉄筋をモルタル充填した基礎の鋼管に差し込みます(図-14)。
図-14 柱に用いる鋼管内の重ね継手
写真-9は実物規模の柱を、立て込んでいる試験施工の様子です。接合に要した時間は約5分で、施工性も良いことを確認しています。
写真-9 柱部材の組立状況
柱と梁の接合は閉合継手を想定しています(図-15)。梁の仮受けに、ハンチを設けておくか、仮設のブラケットを設けてその上に縦梁や横梁を据え付けます。その部分に鉄筋を追加し、高流動コンクリートを施工します。
図-15 柱・梁の部材接合 閉合継手
写真-10は柱に横梁、縦梁を架設している様子です。一箇所当たり架設に5分、追加鉄筋の組立てに15分、型枠組立てに5分が施工試験の結果です。写真-11は接合部の様子です。
写真-10 柱に横梁、縦梁を据え付けている状況
写真-11 柱と梁の接合部
生産性向上や働き方改革のために、プレキャスト化は効果的な方向です。ただし、その成果を得るには、計画時点からプレキャスト化を前提に構造計画と設計を実施することが必要です。場所打ちを前提に設計された高架橋をプレキャスト化してもメリットはほとんど生じません。
プレキャスト化するには部材形状の統一や、運搬やつり上げを考えた部材の大きさや重量とする設計が重要です。また、現場での施工速度は非常に速いので、先行してプレキャスト部材を製作しておくなど契約面での配慮もしないとメリットが生かせません。ある程度の延長の高架工事があるなら、プレキャスト前提での計画、設計を考えたほうが良いと思います。工期のみでなくコスト面での有利性も発揮できると思われます。
(次回は3月1日に掲載予定です)
【参考文献】
1)高橋浩二;鉄道高架橋の具備すべき基本的条件と構造形式の変遷に関する研究、鉄道技術研究報告No.1082 ,昭和53年7月
2)岡田ら:鉄道ラーメン高架橋を5日で構築するプレキャスト構造に関する検討,令和2年度土木学会全国大会第75回年次学術講演会,V-232,2020.
3)安保他:5日での構築を目指したプレキャスト鉄道高架橋の開発、セメントコンクリート6月号 No.892 2021