3.新幹線高架橋
図-11は東海道新幹線高架橋の標準設計の一般図です。高さ10mまでは1層の高架橋で、10mを超えると柱の中間につなぎ梁を設けています。表1は材料の数量を示しています。
図-11 標準ラーメン高架橋
表-1 東海道新幹線標準高架橋材料表
その後の新幹線高架橋は、軌道構造がバラストからスラブ軌道に変わり、高速走行での高架橋相互のずれを少なくする目的で、ブロック相互の接続方式が張り出し形式からゲルバー桁形式や背割式(一つの基礎に2本の柱を並べた構造で、基礎は一体なので高架橋ブロック相互の変位が少なくなることが期待された構造)に変わっています。また騒音対策から防音壁の荷重が大きくなっています。基本的なラーメン形式であることは変わっていません。また最近では、施工性からハンチを梁からなくした高架橋も造られています。
ここまで紹介した高架橋は耐震的には今の設計基準に対応してはいません。耐震診断の上、必要なものは耐震補強をして今も使われています。東海道新幹線の建設より前は鉄筋が丸鋼であることや、コンクリート断面が大きいことなどで、せん断破壊が生じにくい構造ではあります。
4.JR以降の高架橋
国鉄の民営分割後は、新幹線建設は運輸機構が行うこととなり、JR各社は在来線の改良工事が中心となっています。
私がJRになってから関係した高架橋をいくつか紹介します。それまでのスパンは6mから8.5m程度が中心でしたが、桁下の空間を広く取れることと、遠景から柱が煩わしく見えないように、スパンを20m程度まで大きくするようにしました。この程度までのスパンだとRCでも梁のひび割れが問題とならないからです。
写真-3は中央線の三鷹-立川間の高架橋です。
写真-3 パイルベント方式の三鷹-立川高架橋(スパン15m)
都市部の連続立交工事など、狭隘な場所での工事では、線路と民地に挟まれて用地が制約されている場所での工事が多くなります。資機材を搬出入のための工事用通路を施工現場で維持するためには、柱と柱の間を常時開けておくことが必要です。そのためには地中梁をなくして、柱間での掘削をなくし、スラブは埋設型枠か、プレキャストにして支保工不要とすることが必要です。この高架橋は、地中梁をなくし、埋設型枠を用い、柱間は常に工事用に使えるようにして造られました(図-12)。
図-12 地中梁のない高架橋
その後に造られた、東北線の長町高架橋や、平泉駅近くの衣川高架橋なども同じく地中梁のない構造です。東日本大震災を経験していますが、地中梁のないこれら高架橋は無被害であり、耐震面でも問題ないことを示しています。
写真-4は東日本大震災後の長町高架橋です。柱のスパンは隣接する新幹線に合わせて、新幹線柱の1本おきとしたので、スパンは約17mです。隣接する新幹線高架橋には耐震補強前の柱に被害が生じましたが、パイルベント方式のこの高架橋は設計基準が新しいこともあり被害を受けませんでした。
写真-4 長町高架橋(左が新設の在来線、右が新幹線)
施工速度や工事費低減に関しても、地中梁を省いた構造は多くの場合メリットが生じるので、積極的に採用を検討すべきと思っています。杭や柱は太くはなりますが、それ以上の効果が期待できることが多いです。
また、接続形式は、最近は背割り方式を採用することが多くなっています。これは、鉄道においては高架橋同士の横方向のずれが地震時に生じない構造が望まれるため、ゲルバー方式という桁を接合部に挟む方式か、背割れ方式という一つの基礎に柱を2本立てる方式のいずれかを選ばれることが多いのです。背割れ方式を選ぶメリットは、工期が短くなることと、支承が不要になることです。
遠景から見られる高架橋は、スパンが小さいと柱が煩雑に見えてしまいます。それを避けるためには、ある程度のスパンを取ることが必要です。写真-5は、仙石線の津波で被害を受けた線路を移設した新設高架橋です。スパン29mのラーメン高架橋で、ひび割れ防止に梁には若干のプレストレスを入れた構造となっています。
写真-5 仙石線高架橋(スパン29m)
写真-6は平泉の近くの衣川高架橋です。RC高架橋ですがスパンは20mとしています。
写真-6 衣川高架橋(スパン20m)
写真-7は東日本大震災の津波被害で線路を陸側に移設した常磐線の高架橋です。
写真-7 常磐線高架橋(スパン20m)
背割り部の柱の施工は柱間の隙間が小さく、施工しにくいことと、柱と梁の鉄筋が輻輳していることが問題となっています。それを解決する目的で柱を幾分傾斜させることでこれらの問題を解決した構造が写真-8です。配筋は楽になりますが柱の傾斜での施工に工夫が必要です。
写真-8 常磐線高架橋駅部(傾斜させた背割り部の柱)スパン15m