道路構造物ジャーナルNET

㉙JRになってからかかわった鉄道橋

次世代の技術者へ

土木学会コンクリート委員会顧問
(JR東日本コンサルタンツ株式会社)

石橋 忠良

公開日:2022.01.01

10.東北線 荒川橋梁(2001年)

 東北線の荒川橋梁は南福島―福島間にあります。ランガー形式でライズ比は1/9となっています(写真-10/図-8)


写真-10 荒川橋梁(スパン39.9m)

図-8 断面図

11.田沢湖線 斉内川橋梁(スパン68.5m/2020年)

 この橋梁は開床式でかつランガー形式の橋梁です。田沢湖線羽後長野―鑓見内間にあります(写真-11/12/図-9)。 



写真-11/図-9 斉内川橋梁

写真-12 開床式の床構造

 これまで紹介したのは、既設橋梁のスパンを大きくする必要で造られたものです。以下の吾妻線の橋梁は、新設の線路の橋梁です。

 八ッ場ダム建設にともない、それまでの吾妻線がダムに沈んでしまうので、吾妻線の付け替えが行われ、それにともないトンネルや橋梁が造られました。2つの橋梁(第2、第3吾妻川橋梁)が2011年に完成しました。
 このダムの完成には長い年月がかかっています。私は付け替える鉄道のルートの調査の途中からかかわりました。
 調査のころは川原湯温泉が駅に近いので、そこに泊まりました。草津温泉に行く人のほうが多いのですが、ダムに沈んでしまう温泉宿なので、できるだけこちらを利用しようと思っていました。ダムができると宿は皆移転することになるので、温泉宿の新規の投資はしなくなり、鉄道の工事が始まる頃は宿の設備の手入れをしていないので古い設備のままで、そろそろここに泊まるのは最後かなと思っていました。
 突然、民主党政権になり、ダムの建設中止が宣言され、すでに移転した人や、移転しようと準備していた人はただ政治に振り回されてしまいました。川原湯温泉の人は、移転するか、廃業するかの準備をしていた最中で気の毒な状況でした。政権が変わり、再度建設が決まり、中途半端な状況から移転や廃業が進んだのは良かったと思います。
 新しい川原湯温泉はダム湖を見下ろす位置に造られましたが、以前よりはだいぶ宿は減ったかと思います。反対、賛成はあるでしょうが、決まったら住民にあまりに長い期間、中途半端な状況を強いるのは、良くないですね。
 新しい鉄道ルートはトンネルが多くなることから、地質的に掘りやすく、防災的にも安全なルートを意識しての調査です。トンネルはTBMが採用できる地質の良いルートが選ばれています。それでも、TBMで可能かどうか、先輩のトンネル技術者や、地質の専門家から意見を聞きました。
 地質の専門家からは、この地質でTBMができないなら、日本ではどこでもTBMは採用できないだろうといわれて、TBMを採用しました。結果的に非常にスムースに施工できました。それまでに、国鉄時代にTBMを何度か採用していますが、施工途中で地質の悪い箇所にあたり、そこで進めずに、いずれも途中でやめていました。
 この付け替えのルートに2本の橋梁があります。谷が深いので1スパンで渡る計画としました。第2吾妻川橋梁と、第3吾妻川橋梁です。

12.吾妻線 第2吾妻川橋梁(2011年)

 第2吾妻川橋梁(41m+111.5m+167m+111.5m/写真-13)、は3径間連続のPC斜版橋です。コンクリート鉄道橋としては我が国最大スパンの167mです。施工はカンチレバー工法にて行われています(図-14)。


写真-13 第2吾妻川橋梁(41m+111.5m+167m+111.5m)

図-14 施工順序

13.吾妻線 第3吾妻川橋梁(2011年)

 第3吾妻川橋梁(写真-14/図-15)はCFTのアーチにてPC下路桁を吊った構造です。アーチスパン180m、PC下路桁の橋長は203mで、22.2m+159.5m+19.9mの3径間の連続構造です。


写真-14/図-15 第3吾妻川橋梁(橋長203m)

 JRになってから私がかかわった橋梁のいくつかについて紹介しました。新線建設などで多くの構造物にかかわりたいと思いましたが、改良工事での橋梁が中心となりました。JRになってからの工事の多くは都市部の改良工事なので、橋梁などは少なく、施工条件の厳しい箇所での構造物が大部分です。
 橋梁に時々かかわれるのは楽しいものです。都市部の鉄道の改良のための構造物は、外観からは面白いものとならず技術的に難しく、また施工の作業時間も制約されるので何年たっても完成せず、ストレスのたまるものが多く、モチベーションを構造物で維持するのは大変です。10年以上の工期のプロジェクトも多く、計画した人も完成を見ることができないことも多いのです。橋梁は見栄えもよく、工期も長くないので、橋梁にかかわれることは精神衛生的に良いですね。
(次回は2022年2月1日に掲載予定です)

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