2.りんかい線 大井町-大崎間のトンネル工事
2.1 計画概要
今回紹介するのは、この工法を用いて施工した線路下縦断の100mを超えるりんかい線のトンネルです。トンネルの深さが浅く、線路からの土被りが少ないので、シールド工法などは採用できず、HEP&JES工法で円形トンネルを造ることにしました。
この区間は,りんかい線が大井町駅から大崎駅に至る浅い位置のトンネルで、湘南新宿ラインの線路を、線間を広げ、地下から地上に顔を出す部分に当たります。湘南新宿ラインの線路直下の部分では線路下を32.7/1000という急こう配で縦断します。そのため土被りの大きい部分から土被りの小さい状態までの施工となります。ここでエレメントを挿入して接合して構造物を造る本工法を採用しました。完成形は円形複線断面のトンネルとなります。
図-3は、大崎支線(新宿湘南ラインの線路)の下にトンネルが造られる断面を示しています。
図-3 トンネルと既存の線路との関係
図-4は、大崎支線(新宿湘南ライン)とりんかい線の交差状況を示しています。図-4に示すように3箇所に竪坑を設けて、42mと107mの2本のトンネルを非開削で施工しました。内空は施工余裕など考えてR=10.2mとしました。
図-4 施工箇所の平面と縦断図
通常のJES工法でのエレメント高さは850mmが標準ですが、特に区道側の用地に余裕がないことからエレメントの高さを800mmとしました。エレメントの幅は1m程度としました。施工性を考慮して下側の3エレメント分はメッセルにて底設導坑を掘削し、RCの場所打ちにてトンネルを閉合しました。
2.2 地質の概要
この区間の地質は、大井町駅付近の目黒台台地から、目黒川低地帯に順次下がっていく地域に当たり、上総層群とこれを被っているローム層、武蔵野礫層、東京層、東京礫層、その上に沖積世の有楽町層、及び埋め土が分布しています。この施工区間は東京層の粘土土層(Dc層)、有楽町層(Ag、Ac、Ap層)及び埋め土層(F層)に位置しています(図-5、表-1)。この工法は第1竪坑から第3竪坑の範囲に採用されています。
図-5 地質縦断図
表-1 地層一覧表
2.3 施工
円形トンネルのため、通常は矩形のエレメントですが、今回は円形に合わせて図-6のように台形のエレメントを組み合わせて施工しました。
図-6 エレメント詳細図
写真-4はJESエレメントを竪坑内から挿入している状況です。先に挿入したエレメントと継手を勘合させながら、反対側の竪坑よりPCケーブルにて引き込んでいます。
写真-4 JESエレメントの挿入状況
写真-5は反対側の竪坑の状況です。ジャッキが据え付けられて刃口と結んだケーブルを引き込んでいます。ジャッキは連続牽引ジャッキを用いています。
写真-5 連続けん引ジャッキ(第3立坑)
図-7は用いた掘削機です。
図-7 掘削機
写真-6は刃口と掘削機です。オーガー式の掘削機を用いています。
写真-6 刃口及び掘削機
図-8に施工順序を示します。最上部に基準エレメントを施工します。その基準エレメントに継手を勘合させながら、左右のエレメントを順次施工していきます。
図-8 施工順序