2.新橋―浜松町間の環状2号線のための高架橋改築工事
最初に実構造物に施工したのが、新橋駅近くの環状2号線上の跨道橋です(図-1)。この橋梁について紹介します。
図-1 位置平面図
環状2号線は、江東区有明を起点として中央区、港区、新宿区、文京区を経由して千代田区神田佐久間町に至る総延長約14kmの都市計画道路です。1946(昭和21)年に都市計画がされており、マッカーサー道路とも称されています。この道路がJR線の新橋―浜松町間で交差することとなっています。
JR線は、明治時代に造られたレンガの高架橋が今も使われており、スパンが短いので、スパンを広げる必要性と、また道路がJR線の下側となることで、道路の空頭も確保することが必要となり改築することとなりました。
写真-2は工事前の状況です。レンガ高架橋の位置に環状2号線の道路ができるので、レンガ高架橋を壊して、道路の幅員に合わせた鉄道構造物に改築します。写真-3はその計画道路の位置です。環状2号線は地上部と地下部が造られます。さらにその下に地下鉄の連絡線が造られます。
写真-2 工事前の状況/写真-3 環状2号線の計画
図-2は、鉄道交差部の線路の状況と、環状2号線の位置関係を示しています。
図-2 鉄道と計画道路の交差部の平面図
図-3は、上は改築前のJR構造物の断面図です。下は改築後の構造物の断面図です。
図-3 鉄道のレンガ高架橋を、スパンを広げた構造にする改築計画(断面)
図-4は施工手順を示しています。まず、仮設桁を支持するための仮設杭と仮設橋脚の施工を行います。その上にレールを支持する仮設桁を施工します。この工事はすべて線路内からの工事となるため、夜間の列車の走らない時間での施工となります。
仮設桁が施工され、そこにレールが支持されたのちに、既設の構造物を壊して撤去します。その後、仮設桁の下で本設の橋脚と桁の施工をします。それまでの一般的な方法では本設桁を施工して工事桁(仮設桁)を撤去していたのですが、今回は仮設桁を本設桁に活用し、仮設桁の撤去をなくすという工法です。
仮設桁の断面では桁高が小さく、スパンが大きくできないので、仮設桁の下に補強桁を取り付けます。補強桁の下フランジ上に埋設型枠を取り付けます。この状況でコンクリートを打設します。列車振動を受けながらのコンクリートの硬化後、強度が十分出てから、仮設橋脚を撤去します。
図-4 改築の順序
写真-4は施工途中の現場の様子です。写真-5は、用いた高流動コンクリートの状況と、夜間のコンクリート施工の様子です。この後すぐに初列車から通常の列車運行となります。
写真-4 工事中の状況/写真-5 用いたコンクリートと施工状況
図-5は補強桁の下フランジ上に、埋設型枠を取り付けた状況を示します。図-6は、コンクリートの打込み区分です。
図-5 埋設型枠固定方法(主桁部)/図-6 高流動コンクリート打込み区分
図-7は、コンクリート打設の配管計画を示しています。
図-7 打設配管状況(スパン10m以上の場合)
図-8は、コンクリート打設後の計測器の配置を示します。
図-8 Sct-8計測位置図(支間中央断面)
図-9は、変位とひずみの、コンクリート打設後の時間経過に伴う測定結果です。打設直後は合成構造となっていないため、変位は大きく、鋼のひずみは鋼構造の計算値と同じですが、時間とともに鋼とコンクリートが一体化され,合成構造の断面剛性になり、コンクリートと鋼材のひずみは、合成構造での計算値になっています。
図-9 変位(上)とひずみ(下)のコンクリート打設に伴う経時変化
写真-6は構造物ができた状況です。これから構造物の下の道路が整備されます。
写真-6 レンガ高架橋からスパンの大きなSC 桁に変わった状況
写真-7は、供用されている現状です。写真-8は桁下の状況です。
写真-7 供用後の状況/写真-8 桁下の状況
工事費、工期を少なくするには、仮設をできるだけ少なくすることです。今回は工事桁という仮設の桁を撤去せずに、本設の構造に利用しました。技術面では、振動下でのコンクリートの硬化をどう欠陥がないようにできるかということです。型枠、鋼材、コンクリートが一体で振動するようにすることです。この施工の後、同種の構造の工事が数箇所で実施されています。
(次回は2021年11月1日に掲載予定です)
【参考文献】
霞誠司 他;工事桁を本設利用した鉄道複合桁の施工、SED No29,2007年11月
綱嶋和彦他;工事桁を本設桁として利用する合成構造桁のひび割れ防止対策、SED No23,2005年2月