1.コクドギジュツセイサクソウゴウケンキュウショ
7月1日付けで、国土技術政策総合研究所(以下、「国総研」と略します)の所長を拝命しました。第2回となる今回も最初に自己紹介の続きを予定していたのですが、所長を拝命しましたので、変更して国総研について紹介させて頂きます。
平成13(2001)年4月1日、国総研が発足しました。それに先立つ1月6日には、運輸省、建設省、北海道開発庁、国土庁の4省庁を統合して、国土交通省が設立されています。国の中央省庁再編に伴い、国の研究所も独立行政法人という新しい組織形態に移行することとなりました。
独立行政法人通則法によりますと、独立行政法人とは、「国民生活及び社会経済の安定等の公共上の見地から確実に実施されることが必要な事務及び事業であって、国が自ら主体となって直接に実施する必要のないもののうち、民間の主体にゆだねた場合には必ずしも実施されないおそれがあるものを効率的かつ効果的に行わせることを目的として、法律の定めにより設立される法人」とされています。
建設省(平成13年1月からは国土交通省)土木研究所も、他の国の研究所とともに独立行政法人に移行しました。当時、私は、土木研究所の独法移行に際して、初代研究企画課長としてその立ち上げに参加することが出来ました。
国土交通省の研究機関の独法移行に際し、「国土の利用、開発及び保全のための社会資本の整備に関連する技術であって国土交通省の所掌事務に係る政策の企画及び立案に関するものの総合的な調査、試験、研究及び開発、技術に関する指導及び成果の普及、技術に関する情報の収集、整理及び提供」(国土交通省組織令第194条より)に関する業務を行う組織として、土木研究所、建築研究所、港湾技術研究所の業務の一部を引き継ぎ、国土技術政策総合研究所が新しく設立されています。参考までに、土木・建築関係の国の研究機関の変遷を図に示します。各機関の資料を基に一部簡略化していますので、誤りがありましたらご容赦願います。
図-1 国の土木・建築関係研究機関の変遷
このような経緯で設立された国総研です。「コクドギジュツセイサクソウゴウケンキュウショ」?
当時土木研究所にいた私も、聞き慣れない長い名称と感じたことを思い出しました。第1回で紹介した探検バクモンにおいても、国総研という名称が皆様方にあまり知られていないことから、「コクソウケン」に対して、「高倉健」や「不器用なんだろうな」と、冒頭で扱われていました。改めて自己紹介します。「国土に関する技術政策を総合的に研究するところ」です。
国土交通省が所掌する事項についての技術政策として、例えば防災減災や老朽化対策等の国土強靱化、DXやCIM等の生産性向上、まちづくりや地域活性化、環境負荷低減策など、さまざまな政策を支える技術について研究しています。その際、幅広い分野の研究者が同じ組織内にいることによる総合的な視点での取り組みも行っています。
また、環境や防災・減災、メンテナンス、インフラDXといった各研究部に共通する事項については、横断的な組織として、それぞれ研究推進本部を設け、密接に連携して取り組んでいます。
ここで、研究について。技術政策として全国に適用するためには、その内容を一般化、普遍化する必要があります。そのため、国総研では国土や活動に関する膨大な生のデータの分析、現場での試行やそれを通じたデータ取得、大規模な実験や詳細な解析を行っています。また、専門性が高い事項や他分野の技術については大学等の専門家への委託研究を行うとともに、技術を実際に活用する民間の方々との共同研究も実施しています。
土木、建築、港湾・空港という技術的には近いものの、これまで別々の機関で活動してきた3つの組織を併せて発足した国総研であるため、初年度の2001年7月には国総研の研究方針が定められています。組織の使命や活動の方向性・視点などについて、職員一人一人が共通の認識を持つことを目的としています。この研究方針は、社会情勢の変化や研究のニーズ・進捗状況を踏まえて、これまでに7回改定してきました。現在の研究方針は2017年11月に定めたもので、使命や基本姿勢、根幹となる活動として、次を掲げています。
文字ばかりで、やや分かりにくいかとも思います。具体的な活動内容については、国総研のパンフレットにまとめていますので、ご覧下さい。
http://www.nilim.go.jp/lab/bcg/siryou/k2021j.pdf
2.国総研における道路構造物関係組織
上記で紹介しました土木研究所の独法移行において、道路構造物に関する研究は主として独立行政法人土木研究所に引き継がれましたが、国総研においても、道路研究部橋梁研究室で橋梁を、危機管理技術研究センター地震防災研究室で入力地震動を担当しています。その後、平成17年度からは、橋梁研究室が道路構造物管理研究室に改組され、トンネルも含め道路構造物全般を所掌することとなったものの、1研究室体制のままでした。
平成24年12月に発生した中央道笹子トンネル天上板落下事故を契機に、インフラの老朽化が社会問題となり、国土交通省は平成25年を「社会資本メンテナンス元年」と位置づけています。国総研でも、翌26年に研究組織を拡充して、従来の道路研究部を、道路交通研究部と道路構造物研究部に改組しています。そのとき、私も土木研究所から国総研道路構造物研究部の道路構造物管理システム研究官として国総研に異動しました。新しい組織の設立時に参加したのが、土研の研究企画課、土研のCAESARにつづき、3回目となっています。なお、組織を閉じたのも国土庁総合交通課で一度経験しています。
現在、道路構造物研究部は、部長と道路構造物管理システム研究官のもと、4研究室体制となっています。各研究室の所掌事項は次のとおりです。参考までに、土木研究所の組織も[ ]で示しておきます。
・橋梁研究室:橋梁(下部工及び基礎を除く)、道路附属物 [CAESAR]
・構造・基礎研究室:橋梁下部工及び基礎、トンネル、擁壁・カルバート [CAESAR、トンネル、施工技術]
・道路基盤研究室:道路土工構造物(擁壁・カルバートを除く)、舗装 [土質・振動、地質、舗装]
・道路地震防災研究室:地震防災情報のシステム化、地震防災計画、設計入力地震動、地震・津波等による災害から国土・国民を保護するための措置
4名の室長の写真は、国総研の技術相談のページにおいて、次を掲載しています。必要な場合には、ご連絡ください。
http://www.nilim.go.jp/lab/bbg/tec-soudan/index.htm
図-2 国総研の技術相談対応者