はじめに
コロナワクチンの接種を、大規模会場にて先月1回目を行い、今月2回目の接種をする予定です。オリンピックのころには免疫もできているだろうとまずは一安心です。何よりも早く多くの国民にワクチン接種が進むことを期待しています。
前回では、景観委員会からの提案に答えるため、いくつかの部材については性能を確保できることを確認しながら、技術基準を超えた構造を採用したことを紹介しました。
余談ですが、このプロジェクトに採用した鋼管巻きRC柱の軸方向鉄筋比は10%でしたが、別のプロジェクトではスパイラルを巻き付けたRC柱で、軸方向鉄筋比20%も使っています1)。コンクリートでなくモルタルを用いています。
写真-1は鉄筋比20%のスパイラルで巻いた柱の交番載荷実験の様子です。スパイラルをたくさん巻くと変形能力のある高強度のRC柱ができます。鋼管柱よりコンクリート構造の部材として定着など扱いやすい面もあります。どの示方書にも扱われてはいませんが、強度と変形性能的には優れたものができます。S構造や、SRC構造のほかに新しい構造として設計の自由度が広がります。
写真-1 高密度スパイラル巻きRC柱
写真-2は青い森鉄道(元はJR東北線)の天間川橋梁です。この鉛直部材は、高密度軸方向鉄筋のスパイラル巻き鉄筋コンクリトが採用されています。20.6%の軸方向鉄筋比で、中心にはPC鋼材が配置した構造となっています。
写真-2 天間川橋梁
東京駅の中央線アプローチ部の話に戻ります。
1.高密度配筋のRC柱2)3)
丸の内に面する側の柱がエンタシスの鋼管というデザインからの要望に対して、鋼管巻きのRC柱として対応しました。その柱と門型橋脚の形状で一体となる中央線と京浜東北線を受ける柱も、かなりの高密度配筋のRCとなりました。この柱の中間には、線路方向と直角方向に柱を結ぶ梁が京浜東北線、山手線を受けるために入っていることもあり、剛性が大きいのです。
外側の鋼管巻きRC柱の剛性が小さいので、長手方向もラーメン構造としてねじりに抵抗できるようにしましたが、剛性の大きいこの中央の柱、梁に大きな力が集中します。この柱は、将来の歩道の中に位置するので、柱の横幅も1mに制約されています。この柱の配筋もSD390のD38の3段配筋となりました(図-1)。
なお、コンクリートは設計基準強度450kgf/cm2とし、高密度配筋を考慮して流動性の高い配合(スランプフロー55cm±5cm)としました。
柱、梁など、主鉄筋の間隔の狭い(1φ)箇所の鉄筋の継手は、圧接機を改造して熱間押し抜き圧接工法を基本としました。
図-1 柱の断面
写真-3は矩形柱の配筋の状況です。
写真-3 高密度配筋の矩形RC柱
柱部材や、柱と梁の接合部など、1/3の模型実験にて交番載荷実験の上、安全を確認して採用しました。担当した工事事務所は首都圏の工事を担当する東京工事事務所で、試験室を保有しており、社員が直接載荷実験を行い、その都度確認しながら設計に取り入れていきました。
図-2は交番載荷試験の結果の一例です。表-1は、その時に行った交番載荷実験の供試体です。軸方向鉄筋比が10%程度まで実験しています。必要な帯鉄筋を配置すれば、変形性能が確保できることを確認しています。
図-2 交番載荷試験の履歴曲線の例
表-1 高密度配筋柱の交番載荷実験供試体