2.ボール紙で作る橋コンテスト
冒頭で紹介しましたとおり、この連載では、主に国総研の活動を紹介していきます。研究所の活動については、毎月土木研究センターから刊行されている「土木技術資料」で紹介している他、記者発表やそれを紹介したメールサービス等、広報活動を行っています。しかしながら、あまり知られていないようですので、今回の連載を活用して、紹介させて頂きます。なお、国総研のメールサービスについては、次で登録可能です。
http://www.nilim.go.jp/lab/bcg/mailmag/index.html
国総研の活動紹介第1号として「ボール紙で作る橋コンテスト」を取り上げます。「橋梁と基礎」の本年3月号にも掲載されていますので、ご興味を持たれた方は、ご覧下さい。
国総研では、土木学会が制定している「土木の日(11月18日)」関連行事として、例年11月に国立研究開発法人土木研究所との共催で研究所の一般公開をしており、その一環として「ボール紙で作る橋コンテスト」を実施しています。
本コンテストは、日本の将来を担う小学生に「ものづくりを通じて生活を支えている橋等の土木インフラの大切さを知ってもらう」ことを目的としており、建設省土木研究所時代の1994年に第1回を行い、現在は国総研が主体となって運営しています。2020年には第27回を迎え、これまでの応募総数は11,660作品、延べ参加者数は8,910人にも上りました。各地でも同様なコンテストは実施されているともいますが、これほど長期にわたって実施されているコンテストは、研究所ならではといえるのではないでしょうか。研究所一般公開では、受賞作品の発表と表彰式、全応募作品の展示を行っていますので、ご興味のある方は、是非、ご覧下さい。
本コンテストの実施要領は、図-2のとおりです。応募された作品は、橋梁、美術の専門家および教育関係者(計6名)が、「橋としての安定感」、「デザインや仕上がりの美しさ」、「ぼくらしさ、わたしらしさ(独創性)」を評価します。それぞれが優れた作品に「構造デザイン賞」、「美術デザイン賞」、「努力賞」(各5作品、計15作品)を、全ての項目が優れている作品に「最優秀賞」(3作品)を授与しています。また、研究所一般公開時の全応募作品展示での来場者投票による最多得票作品に「土木の日賞」(1作品)を授与し、さらに積極的な参加が認められる学校には「学校奨励賞」として感謝状を贈っています。私も、国総研の道路構造物研究部長時代の4年間に審査員として参加したほか、それ以前にも担当者として度々関係してきました。25年以上継続しており、アイデアもつきるのではとも思いますが、その年の話題を取り入れた子供らしい作品の他、構造面でも、なるほどと思わせるような作品が毎年生み出されています。近年のコンテスト入賞作品より特徴的な作品を写真-3に示します。写真ではその素晴らしさの一部しか伝わりませんが、表彰された作品を国総研のロビーに展示していますので、御来所された方は、是非ご覧下さい。最近の受賞作品については、次でも公開しています。
http://www.nilim.go.jp/lab/bbg/event/index.html#link
図-2 コンテスト実施要領
コンテストへの参加申込用紙では「おとなになったらどんな仕事をしたいか」という記入項目(自由記述)を設け、参加者がどの様な職業に興味を持っているかのアンケートを行っています。2018年および2019年の2ヵ年のアンケートの集計結果が図-3です。a)が全参加者の集計結果、b)が受賞者(最優秀賞、構造デザイン賞、美術デザイン賞、努力賞の受賞者)のみを対象とした集計結果です。コンテスト全参加者の結果では、多い順に、医療・看護関係、スポーツ関係、芸術関係、飲食・商店関係となっています。工作系コンテストへの参加児童の意識というバイアスがかかった調査であるものの、他機関による同様の調査と傾向は類似しています。土木建築関係はその他を除き5番目に多く、約7%となっています。一方、受賞者の結果は、芸術関係、工業系職人・デザイナー、医療・看護関係、土木建築関係、公務員の順となっており、医療・看護系以外はいずれもほぼ倍増しています。逆にスポーツ関係は大きくその割合を減じています。この調査結果から、本コンテストの参加に力を入れている児童らがイメージしている職業は、コンテストの目的と関係が深いものとなっています。ボール紙で作る橋コンテストが、インフラ関係の職業を指向するきっかけとなり、そのモチベーションの維持・向上に繋がっていくことを期待しています。ボール紙で作る橋コンテストは、筑波以外でも行われていました。皆さんの職場などに、参加経験者がいらっしゃるかも。ちなみに、私の息子も小学校時代に参加・受賞し、これがきっかけとなったかは分かりませんが、土木関係の職場で頑張っています。
「ボール紙で作る橋コンテスト」の取り組みについては、土木学会2020年度全国大会第75回年次学術講演会において発表し、田中賞選考委員会より「かけはし賞」を受賞しています。皆様、「かけはし賞」をご存じでしょうか?せっかくの機会ですので、土木学会のHPから紹介させて頂きます。
https://committees.jsce.or.jp/tanaka_sho/node/28
そもそも土木学会田中賞は、田中豊博士の功績を記念する事業として、橋梁・構造工学に関する優秀な業績や作品に対して授与されており、昭和41年度より始まっています。この賞の創設から50年を経過したことを記念して、土木学会の田中賞選考委員会において、令和元年度から始められたのが「かけはし賞」です。土木学会全国大会年次学術講演会において,橋のあり方,コンセプトやアイデア、ビジョン、オピニオン、イノベーション、生産性向上、ビジネス,橋守,橋を通したまちづくり,文化・歴史,普及・啓発,育成・継承,持続性・SDGs,地域活性化・住民参加など,橋に関する社会性や将来性に優れた講演に,社会とのかけはし,未来へのかけはしの意味を込めて,「かけはし賞」が授与されます。
今年度分のエントリー締め切りは6月30日(水)となっていますので、橋に関する講演を行われる方は、次から申し込まれては如何でしょうか?
https://committees.jsce.or.jp/tanaka_sho/kakehashia-award_R3
(次回は7月上旬に掲載予定です)