3.特別な検討の上、技術基準を超えて採用した構造
鋼管巻きRC柱
現在丸の内側の柱は径が上下端1mで鋼管のエンタシスとなっています。太さは、歩車道境界に設けるため制約された柱です。デザインでは鋼製のエンタシス柱とすることが求められました。門型橋脚の横梁の大きさも大きくしないようにデザイン上要求されました。
鋼管構造の柱ではRCの横梁との接合部が大きくなりすぎることになります。また鋼管で製作すると、肉厚のエンタシス状の鋼管を製造できる会社も国内には数社で、かつコストもトン当たり100万を超えるということで非常に高価になることがわかりました。
そこで鋼管厚は15mmに薄くして、構造上はスターラップと考え、主筋は鉄筋としたRC構造とすることにしました。柱の強度はRCでも確保しなくてはならないので、SD390のD38を3段(20本)に重ねての配筋としました。鉄筋比は10%にもなります。
設計基準では、柱の鉄筋比は最大6%と規定されていますが、それを超えています。鋼管で囲んであるので構造性能的には問題ないと思っていましたが、供試体での交番載荷実験で性能は確認しました。図-10は梁と柱接合部の約1/3の供試体での交番載荷実験の結果です。十分な地震時の変形性能が確保できます。柱と梁の接合部も鉄筋での接合なので、接合部が大きすぎるということがなくなりました。
図-10 鋼管巻きRC柱の交番載荷試験結果
もう1つの問題は施工です。このような鉄筋の多い柱にコンクリートを完全に充填できるのかということで、社内や施工者からも不安との意見が多く出されました(写真-4)。
写真-4 鋼管巻きRC柱の配筋状況
これも実物大の供試体で、コンクリートの打設試験をして関係者に見てもらい納得してもらいました。コンクリートは高流動コンクリートです。構造的にはRC構造で、材料も15㎜の鋼板と、鉄筋とコンクリートなので、鋼管に比べて大幅にコストがかからない構造となりました。
写真-5の丸の内側に面している柱が鋼管巻きのRC柱です。
写真-5 丸の内側から見た東京駅近くの中央線高架橋
この鋼管巻きRC 柱は、耐震的には最も優れた構造の一つと思っています。コンクリートの施工の可能な範囲まで鉄筋を鋼管のなかに配置した構造は、曲げ耐力も大きく、鋼管は曲げを受けないので降伏せず、コンクリートをいつまでも拘束し続けます。またコストも鉄筋は鋼管よりも安いので、CFT構造よりもメリットが大きいと思っています。(次回に続きます)
【参考文献】
1)SED No.1 東日本旅客鉄道【株】構造技術PT.監修 1993-11
2)SED No.2 東日本旅客鉄道【株】構造技術PT.監修 1994-5
(次回は7月1日に掲載予定です)