(4)斜張橋用ケーブルの種類
①ケーブルの分類(図-4参照)
②ケーブル構成と特徴
1)ストランドロープ(図-5参照)
・素線を数本から数十本撚り合わせたストランドをさらに複数本撚り合わせて作る。
・最もフレキシブルで取り扱いが容易だが、撚り合わせることで強度低下が生じる。
・弾性係数が小さい。
2)スパイラルロープ(図-6参照)
・19~217本の素線を撚り合わせた状態でケーブルとして使用。
・柔軟性はストランドロープより落ちるが、同一径のより線ケーブルの中で最も高強度。
3)ロックドコイルロープ(図-7参照)
・スパイラルの外層にZ線、T線と呼ばれる異形断面の素線を配置することにより表面が平滑で、ロープ内部への雨水など腐食因子の侵入が抑制され防食性に優れている。
4)平行線ケーブル(PWS)(図-8参照)
・直径5㎜の亜鉛メッキ鋼線を平行に束ねて製作。1980年頃まで斜張橋ケーブルで使用。
・1990年以降は吊橋ケーブルに使用。
5)被覆平行線ケーブル(PWC)(図-9参照)
・直径7㎜の亜鉛メッキ鋼線を平行に束ねて製作。
・取扱い性を向上させるため、機械的性質を損なわない角度でより、さらにその上から防食の為、ポリエチレン等で被覆。
6)PCケーブルの一例(図-10参照)
・PC鋼より線を7本もしくは19本の多重よりにしてポリエチレンで被覆した工場製作ケーブルと、被覆されたPC鋼より線を複数本束ねて外套管(保護管)に挿入する現場製作ケーブルがある。
・現在では裸仕様やECF(内部充填型エポキシ樹脂被覆PC鋼より線)等、より防食効果の高いケーブルが使用されている。
(5)ケーブルの防食
①より線タイプ
・ストランドロープ、スパイラルロープについては、亜鉛メッキ鋼線での防食が基本となる。
・ロックドコイルロープは、最外層のZ線、内層のT線により水密性を高めることで防食する。
②平行線タイプ
・平行線ケーブル(PWS)は、亜鉛メッキ鋼線の外側に保護管(PE管やFRP管)を設置。
・被覆平行線ケーブル(NEW-PWS)は、亜鉛メッキ鋼線と高密度ポリエチレン(PE)被覆により防食。
・被覆平行線ケーブル(SPWC-FR.CM)には、グラウトタイプとノングラウトタイプがある。
<グラウトタイプの例①><瀬戸大橋 岩黒島橋>(図-11参照)
・ポリエチレン(PE)(カーボン2~3%)の2重管(外層:3㎜、内層:6.5~9.5㎜)
・内部にニ液混合硬化型のポリブタジエン系ポリウレタンを現場にてグラウト充填する。
<グラウトタイプの例②><阪神高速 天保山大橋>(図-12参照)
・樹脂被覆(10μm)を施した鋼線+セメントミルク+PE管
・PE管が損傷した場合、補修までの期間はセメントミルクの強アルカリ性に依存
・ケーブル架設~グラウト注入までの期間の防錆は、防錆油か亜鉛メッキか樹脂被覆
・ノン亜鉛メッキ鋼線を採用
亜鉛メッキ鋼線の特徴
(良い点) 素線自体の防錆効果が大
(悪い点) 疲労特性や強度低下、セメントミルクと亜鉛が化学反応を起こし、
水素脆化の可能性有り
・PE管の役割と寸法
→ケーブルの防錆は、PE管の耐候性に依存
→セメントミルク注入時の内圧に対して永久変形を起こさない肉厚
→上段ケーブルは、12.5㎜、その他は6.8~7.5㎜
<ノングラウトタイプの例><NEW-PWSの事例>(図-13参照)
③PCケーブル(PC斜張橋やPCエクストラドーズド橋)(図-14参照)
・ディビダーク工法系(裸仕様+グラウト+FRP管、裸仕様+グラウト+PE管、ECF+グラウト+PE管、ECF+グラウト+FRP管、ECF(高強度)+グラウト+PE管、マルチエポキシケーブル、マルチポリエチレン被覆鋼材
・SEEE工法(F-PH工法、FUT-H工法)
・VSL工法、等
(6)ケーブル等の損傷事例
これまで国内、国外の斜張橋等ケーブルに発生した損傷事例を表-1に示す。
これらの他、PWSケーブルに生じた腐食事例(写真-11)、PE管損傷事例(写真-12)を示す。
斜張橋ケーブルの耐久性評価と今後の維持管理に関する研究小委員会 報告書より
(7)ケーブル防食技術の発展
斜張橋は、その解析技術の進歩とケーブル材料の進化により長支間化の道を歩んできた。長支間化と共に小段ケーブルからマルチケーブルに移行してきた。防食に関して言えば、完全防食を目指すべく被覆平行線ケーブル(工場収束型)が鋼斜張橋では主流である。一方、PC斜張橋では現場収束型PCケーブルが主流である。