15年間スケーリングを抑制、塩化物イオン浸透抑制はなお持続
現場での15年の追跡調査を通じて見えてきたシラン系表面含浸工法の中長期的効果
■スケーリングの発生状況
写真-4は、一例として、シラン「No.5」を塗布した区間と無塗布区間との境界付近における天端面と車線側側面の外観の経年変化を示したものです。車線側側面をみますと、塗布後4年目の調査では、無塗布区間では広範にスケーリングが発生していたのに対し、塗布区間は明らかにスケーリングが少なく、塗布効果が表れていることがわかります。しかし、紫外線の影響に加え、美幌橋の地覆は路面水が集まりやすいこともあって、塗布後10年目以降、塗布区間でもスケーリングが見られるようになりました。なお、車線側側面では、スケーリングに加えて、除雪車のグレーダーの刃による引っかき傷も確認されました。
図-2は、塗布後15年目の天端面と車線側側面において調べた平均スケーリング深さの測定結果です。天端面では、No.1、3、4、5の塗布区間において、4mm前後のスケーリングが確認されました。No.2塗布区間と無塗布区間のスケーリングは、比較的軽微な状況にありました。車線側側面の平均スケーリング深さは、いずれの区間も6mm前後でした。
図-2 塗布後15年目の平均スケーリング深さの測定結果
一方、外側側面については、写真-5に示すように、塗布後15年目もスケーリングや粗骨材の露出が見受けられず、また、無塗布に比べると表面の汚れは少ない様子でした。なお、外側側面に関しては、No.5以外の塗布区間も、表面にスケーリングは確認されませんでした。
写真-5 15年目の外側側面の外観(無塗布区間とNo.5塗布区間の境界付近)
■吸水防止層の状態
図-3は、車線側側面から採取したコア(写真-3)に水を噴霧して調べた吸水防止層の厚さの測定結果です。一例として、写真-6にNo.5塗布区間から採取したコアに水を噴霧した様子を示します。No.1、3、5を塗布した区間では15年を経た現在も吸水防止層が残存していることが確認されました。No.2、4を塗布した区間では、吸水防止層が確認されませんでした。吸水防止層の厚さが比較的大きかったのはNo.3とNo.5で、それぞれ4mm、8mmでした。
図-3 吸水防止層の厚さ(車線側側面で測定)/写真-6 塗布後15年目にNo.5塗布区間の車線側側面から採取したコアに水を噴霧した様子
■塩化物イオンの浸透状況
図-4は塗布後15年目の塩化物イオン量測定結果、図-5は塩化物イオン濃度分布のEPMA画像です。図-4を見ると、スケーリングは進行しているものの、吸水防止層が残存しているNo.3とNo.5(図-2、図-3)塗布区間では、コンクリート内部の塩化物イオン量が全体的に発錆限界とされる1.2kg/m3より概ね小さい値となっていました。図-5の画像からも、No.3とNo.5塗布区間のコンクリートには、15年経過後も塩化物イオンが殆ど侵入していないことがわかります。なお、No.5のEPMA画像の右端をみますと、量は少ないものの、塩化物イオンの存在を示す青色を呈しています。これは、クラックからの侵入と思われます。
図-4 塩化物イオン量の測定結果(15年目、車線側側面)/図-5 塩化物イオン濃度分布のEPMA画像(15年目、車線側側面)