道路構造物ジャーナルNET

⑰100年を超えても使い続けられている多くの鉄道構造物

次世代の技術者へ

土木学会コンクリート委員会顧問
(JR東日本コンサルタンツ株式会社)

石橋 忠良

公開日:2021.01.01

1.4 トンネル
 写真-10は1887年に造られた清水谷戸トンネルです。経年134年となっています。今もこのように使われています。トンネルの覆工の材料は、初期はレンガです。これも高架橋と同様に、国産でつくれたものがレンガの時代はレンガで、その後国産でコンクリートができるようになり、コンクリートブロック、コンクリートの打設と変わってきています。
 施工法も、木製の支保工から、鋼製の支保工にてコンクリートの打ち込みの時代から、吹付けコンクリートのNATM工法へ変わってきています。トンネルの技術者の技術の中心は、如何に地山に応じて早く掘るかということにありました。トンネルの構造は、地山が支えており、覆工は、岩の落下防止と化粧という程度の意識であったと思います。
 支保工の時代はコンクリートを完全に地山と隙間なく施工するのはむつかしく、覆工の裏側は空隙があるのは普通です。NATM工法は、 最初に地山に吹付けコンクリートを施工します.そのため地山と覆工の間に空隙はありません。その内側に覆工とシートで縁を切ったコンクリートの2次覆工を施工しているので、トンネル内からはきれいなコンクリートが見えます。岩に直接コンクリートを密着させたり、1次覆工と密着させて2次覆工を施工すると、コンクリートの収縮が拘束されて2次覆工にひび割れが多く発生してしまいます。

2.構造物の耐久性の問題は、多くは建設時の原因

 このように、初期に造られた構造物は、経年100年程度になりますが、多くの構造物は使い続けられています。また、今後も使い続けていくものと思っています.耐震設計などが変わって、性能が足らないものは耐震補強などの処置がとられてきています。

 多くの土木構造物は、レンガ、コンクリート、鋼材など無機の材料から造られています。これら無機の材料は自然には材令に伴う劣化はしにくいものです。コンクリートの劣化は、凍害やアルカリ骨材反応など主にコンクリート内部の膨張が原因です。これらの建設時点での対策は進んできています。また鋼材は錆びなければ劣化しません。応力の繰り返しの多い箇所では設計が不十分だと疲労の損傷はあります。建設時点で、設計が妥当で、施工がしっかりされておれば、経年劣化のほとんどない材料からなっている土木構造物はあまり劣化するものではありません。これが塗料や樹脂や、新素材といわれる多くの有機物は、紫外線などで劣化していきます.
 ほとんどの劣化原因は、建設時の設計、施工にあります。知識不足や、管理や検査の不十分が原因です。今は多くの原因がわかってその対応方法もわかってきています。大量に施工する時代ではなくなっていますが、数十年で劣化するような構造物としない設計、施工ができる時代となっていると思います。ただしすでに造った構造物には、設計や、施工での知識や配慮不足で造られたものが多く存在しているのも事実です。これらについては、点検により見つけて、適切に対処していくことは必要です。

3.構造物の設計

 設計のルールの変化で大きなものは、せん断設計の変更と耐震設計があります。この他荷重の変化があります。鉄道では在来線は蒸気機関車の荷重から電気機関車、電車と最近は軽くなるほうへ変わってきています。古い時代の構造物も鉄道では荷重の面では有利になっています。

 構造物の設計上の耐用年数について、構造物設計事務所で、設計標準の改定時に議論したことがあります。設計基準上は12進法のイギリスでは120年ですが、日本では10進法であることもあり100年とすることにしました。その時先輩方からは、有楽町付近のレンガアーチや中央線や総武線の神田付近の高架橋などを100年過ぎたからと壊して造り直すことにはならないでしょう、必要な限り実際は永久に使うと思いなさいと言われました。100年を超えて使われ続けている今回紹介した構造物の多くも、機能を終えることがなければ、今のままで今後とも、あまりメンテナンスに苦労することなく、さらに使い続けられると思っています。(2021年1月1日掲載)

 参考文献
1)池田俊雄、地盤と構造物、鹿島出版会、1999年1月20日

ご広告掲載についてはこちら

お問い合わせ
当サイト・弊社に関するお問い合わせ、
また更新メール登録会員のお申し込みも下記フォームよりお願い致します
お問い合わせフォーム