道路構造物ジャーナルNET

⑬ RC桁の曲げひび割れと乾燥収縮

次世代の技術者へ

土木学会コンクリート委員会顧問
(JR東日本コンサルタンツ株式会社)

石橋 忠良

公開日:2020.09.01

4.断面内の鉄筋拘束の影響と収縮5)

 RC部材としての収縮ひずみは、断面内の鉄筋などに拘束されると少なくなりますが、コンクリートに生じる引っ張り応力度は大きくなり、ひび割れは出やすいことになります。
 鉄筋量を変えたRC部材の収縮を計測したことがあります。図4-1は供試体断面です。シリーズ1は30×30cmの断面で、軸方向鉄筋比を変化させたものです。長さは2mの梁です。鉄筋比は、0、2.2、5.2、8.6、16.8、22.9%です。シリーズ2は断面が、10×10、15×15、20×20cmで、鉄筋比を0~5%の範囲で変えた供試体です。長さは1.5mの梁です。


図-4.1 供試体断面

 シリーズ1の供試体の乾燥収縮の進行を、図-4.2に示します。鉄筋比5.2%までを示しています。それ以上の鉄筋比では、鉄筋に拘束されてコンクリートはほとんど収縮しません。
 図-4.3はコンクリート表面のひび割れ状況です。荷重は作用しない状況ですので、これは鉄筋に拘束されて収縮が妨げられて入ったひび割れです。
 図-4.4は無筋供試体の断面の大きさの違いによる乾燥収縮の進行を示しています。
 図-4.5は30×30cmの断面に換算した、部材の乾燥収縮と鉄筋比の関係を示したものです。鉄筋拘束がなければ、650μm程度の収縮が、鉄筋比が3%程度になると120μm程度になっています。


図-4.2 鉄筋比の異なる供試体の乾燥収縮の進行

図-4.3 ひび割れ状況

図-4.4 無筋供試体の乾燥収縮の進行

図-4.5 鉄筋比と乾燥収縮(30×30cm断面に換算)

 ひび割れ幅は、初期ひび割れの発生材令が影響し、乾燥収縮量が大きく影響します。実際のコンクリートの乾燥収縮は、骨材の違いで、10×10×40cm試験体で400μmから1200μmまで分布しています(図-5)。このようにばらつくものを、割り切って、荷重の載荷材令を仮定し、乾燥収縮量も仮定して計算しているのです。計算過程と違う施工工程や、設計の収縮と異なるコンクリートを使うことは日常的なのです。あまり、ひび割れ幅の計算に神経質にならないことです。参考値程度にわり切って設計を用いることです。


図-5 粗骨材の岩種(A・B・C)と単位水量が乾燥収縮ひずみに与える影響(2007年土木学会コンクリート標準示方書改定資料より)

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