3.ゴムシュー
宮城県沖地震で鉄製のシューが多く壊れたことへの対処と、支承のコストダウンを目指して、その後、鉄道ではゴムシューを使うことが主流になりました。
ゴムシューそのものは錆びることはなく、表面にひび割れが生じる劣化があっても、桁の伸縮を拘束しないという機能は維持し続けると思われます。東北線鬼怒川橋梁は、1961(昭和36)年に建設されたスパン30.1~36.5mの3径間連続PC箱型桁4連と、単純PC箱型桁3連、単純T型桁1連からなる橋梁です。支承にゴムシューのフレシパッドが初めて採用されました。地震による水平力を各橋脚で分散して受け持たせる方式が考案され使われてもいました。
鉄道橋で最初にゴムシューも用いた鬼怒川橋梁のゴムシューの劣化状況を調査しました。当時経年20年程度でしたが、劣化はほとんどしていない状況でした。東日本大震災でゴムシューが水平に切れたという例が報告されていますが、それでも必要な機能である、温度伸縮などの伸び縮みを拘束しない機能は維持しているだろうと思っています。
ゴムシューで生じるトラブルは、短いスパンのRCの橋梁では、多くはシュー据え付け時の施工不良によるものです。鉄道で用いているゴムシューはパット形のシューですので、ゴムシューの厚さが薄いため、桁のコンクリートの施工時に、型枠から漏れたコンクリートが桁座と桁をつないでしまい、ゴムシューを介さずに、漏れたモルタルなどから直接力を橋脚に伝達してしまい、桁座や桁端を壊してしまうというトラブルが多く生じていました(写真-2)。狭い隙間に型枠を据え付けるのに、当初は発泡スチロールを敷いて型枠にしていましたが、バイブレータをかけると浮いてしまったり、穴をあけたりとのトラブルが多くありました。
その改善のため、その後は砂を敷いてその上に合板の型枠を置いて桁のコンクリートを施工し、砂を水で流して型枠を撤去する方法としましたが、それでも施工不良が続いていました。今では、埋設型枠をシューの上面に用いることにして施工のトラブルをなくしています(写真-3)。
長大橋のゴムシューも橋脚天端に据え付けなくてはいけません。大きさが大きいと、4分割して据え付けることもあります。据え付け面を平滑に施工してそこにゴムシューを据え付ける方法や、ゴムシューを設計の高さに浮かして置き、隙間に無収縮モルタルを施工する方法がとられています。
ほかの材料のシューの据え付けでも同様でしょうが、この据え付けも非常に施工が難しいものです。平滑に据え付け面を施工するのも難しく、あとから注入する場合も空隙なく注入するのも難しいのです。そのため、支承部は欠陥が生じやすい構造であり施工法でもあるのです。
4.ロッカーシュー
初期の長スパンのPC桁はロッカーシューが用いられています。これは最初の本格的なPC鉄道橋の第一大戸川橋梁の設計がフランス人の技術者が行い、その時のシューがコンクリートロッカーシューであることから、その技術を引き継いでしばらくロッカーシューが用いられたのだと思われます(写真-4)。図-5はコンクリートロッカーシューの例です。
PC桁を大量に採用した大阪環状線(1961(昭和36)年)、北上線鷲巣川PC連続桁(1962(昭和37)年)、東海道新幹線のコンクリート長大橋では鋳鋼ロッカーシューが採用されています。図-6は鋳鋼ロッカーシューの例です。
このシューは地震の時に転倒しやすい構造です。そのため、転倒防止のコンクリートの台が設けてあります(図-7)。