道路構造物ジャーナルNET

②鉄道建設の歴史

次世代の技術者へ

土木学会コンクリート委員会顧問
(JR東日本コンサルタンツ株式会社)

石橋 忠良

公開日:2019.10.01

2.2 明治から戦前までの鉄道の延伸
 鉄道の延伸状況を図-1に示します。
 1919(大正8)年には線路延長9,999km、1938(昭和13)年には営業キロ18,100km、1944(昭和19)年には営業キロ約20,000kmと、ほぼ現在に近い値となっています。


図-1 鉄道の延伸状況(左図は1896(明治29)年、右図は1945(昭和20)年)※1

 最初の線路増設工事(単線から複線に)は、1872(明治5)年に開業した新橋―横浜間で、1876(明治9)年には新橋―品川間4.9kmが複線化されました。1889(明治22)年、東海道本線 東京―神戸間589kmが全通しましたが、そのほとんどは単線でした。1894(明治27)年ころから複線化を進めますが、天竜川橋梁の複線化により全線が複線化したのは1913(大正2)年です。
 山陽本線では、1889(明治22)年兵庫―神戸間の複線化を最初に、1899(明治32)年神戸―姫路間が完成しています。さらに1930(昭和5)年までには山陽本線のほとんどの区間で複線化されました。この間、東北本線では宇都宮まで、常磐線では平までと、いずれも東京方の複線化が行われました。主要幹線の複線化は明治中期以降から1930(昭和5)年ころまでに全営業キロの10%に当たる2,200kmが複線化されていました。
 技術基準は、鋼橋に関しては、1912(明治45)年2月に鋼鉄道橋設計示方書(鉄道院達111号」が最初に整備されたものです。
 コンクリートに関しては、1914(大正3)年に、達第684号により、「鉄筋混凝土橋梁設計心得」が制定されました。1916(大正5)年には、達第007号で、「混凝土拱橋標準」、達第1215号で「混凝土井筒定規」が制定されています。
 なお、土木学会の鉄筋コンクリート標準示方書は、1873(明治6)年に、大河戸宗治委員長のもとで、最初につくられています。

2.3 戦後の建設
(1)在来線(線路増設、複線化)
 1955(昭和30)年以降、経済の飛躍的発展期を迎え、人口の都市集中化に対する通勤輸送対策、輸送力増強のため各地で線路増設の工事が推進されました。首都圏では1965(昭和40)年に東海道、中央、東北、常磐、総武の放射状5線を複々線化する長期計画が始められました。
 大阪環状線の工事は、1956(昭和31)年に着手し、西九条―天王寺間が1961(昭和36)年に、続いて西成線の大阪-福島間が1964(昭和39)年に、福島―西九条間が1965(昭和40年)に複線高架化が完了しました。
 1945(昭和20)年での営業キロ約19,620kmのうち複線化されていたのは約2,330kmで、複線化率約12%でした。1961(昭和36)年から東北線(宇都宮―好摩間)、北陸線(米原―富山間)、上越線、中央線(高尾―甲府間、名古屋―多治見間)、鹿児島線(久留米―熊本間)などの複線化が計画され実施に移されました。1967(昭和42)年には上越線全線、1968(昭和43)年には東北線全線、1969(昭和44)年には北陸線全線の複線化が達成され、輸送力の増強と、列車のスピードアップに大きく寄与しました。国鉄がJRに分割する直前の1986(昭和61)年度で国鉄の営業キロ19,440kmのうち複線区間は5,810km、複線化率は30%となっていました。

(2)新幹線
 東海道新幹線は東京―新大阪間515.4kmを5年で完成し、1964(昭和39)年に開業しました。山陽新幹線新大阪―岡山間160.9kmは1967(昭和42)年に着工し、1972(昭和47)年に開業、同じく山陽新幹線岡山―博多間392.8kmは1970(昭和45)年に着工し、1975(昭和50)年に開業しました。ここまでの新幹線はいずれも5年で造られています。
 東北新幹線東京―盛岡間は1971(昭和46)年に工事が着工され、1982(昭和57)年に大宮―盛岡465.2kmが開業しましたが、上野―大宮27.7kmは1985(昭和60)年に、東京―上野3.6kmは1991(平成3)年に開業しました。盛岡―八戸間96.6kmは2002(平成14)年に開業、八戸―新青森間81.8kmは2010(平成22)年に開業しました。
 上越新幹線大宮―新潟間269.5kmは東北新幹線と同じ1971(昭和46)年に着工されましたが、開業は1982(昭和57)年と東北新幹線から5ヶ月遅れとなりました。
 九州新幹線の鹿児島ルート博多―鹿児島中央間256.8kmのうち、新八代―鹿児島中央間126.8kmは2004(平成16)年に開業し、2011(平成23)年3月に全線開業しました。長崎ルートについては、ルートの一部の工事について2008(平成20)年に着工されています。
 北陸新幹線(長野新幹線)は1989(平成元)年に高崎―軽井沢間が着工、1997(平成9)年に高崎―長野間117.4kmが開業しました。長野―金沢間は2014(平成26)年度に開通しました。
 北海道新幹線では新青森―新函館間148.8kmで、そのうち青函トンネルを除いた延長は94.9kmであり、2015(平成27)年度に開業しました(図-2)
 北海道新幹線の新函館以北、北陸新幹線の金沢―大阪間、中央新幹線はJR東海の事業としてリニア方式で計画され、それぞれ工事が行なわれています。


図-2 各新幹線の建設年代

参考文献
1.鉄道施設技術発達史:(社)日本鉄道施設協会 1994(平成6)年
2.日本国有鉄道、日本国有鉄道百年史4巻、6巻、社団法人交通協力会、1972(昭和47)年4月、10月
3.鉄道・運輸機構ホームページ
(2019年10月1日掲載、次号は11月1日に掲載予定です)

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