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取替RC床版の開発及び実橋における施工事例

日本大学大学院
非常勤講師

阿部 忠

公開日:2019.08.19

4.輪荷重走行疲労実験方法および等価走行回数

 輪荷重走行疲労実験は(写真-2),RC床版供試体および取替床版供試体ともに幅300mmの輪荷重を軸方向に1,200mmの範囲を繰返し走行させる実験である。また,耐疲労性の評価は等価走行回数Neqを算出して評価した。なお,等価走行回数の算定式におけるS-N曲線の傾きの逆数mの絶対値には松井らが提案する12.7を適用した4)。

5.実験結果および考察

5.1 耐疲労性の評価
  コンクリートの圧縮強度49.6N/mm2の供試体の等価走行回数Neqは21.971×106回である。
 軸直角方向に間詰部を設けた取替RC床版AのプレキャストRC床版コンクリートの圧縮強度は,材齢28日で56.4N/mm2,間詰コンクリートの材齢14日で圧縮強度が48.3N/mm2である。等価走行回数Neqは日で56.4N/mm2,間詰コンクリートの材齢14日で圧縮強度が48.3N/mm2である。等価走行回数Neqは265.273×106回である。取替RC床版A供試体と同様の圧縮強度を目標としたRC床版供試体の等価走行回数と比較すると12.07倍である。
 供試体取替RC床版Bは,2車線における1車線側の施工が修した後に,2車線側を施工した場合,橋軸方向の間詰部が必要となる。そこで,輪荷重走行方向と橋軸直角方向に間詰部を設けた取替RC床版である。この取替RC床版BのプレキャストRC床版の圧縮強度は取替RC床版Aと同様に,材齢28日で56.4N/mm2,間詰コンクリートは材齢14日で48.3N/mm2である。この供試体の等価走行回数Neqは274.760×106回である。供試体RC-Bの12.51倍である。また,橋軸直角方向に間詰部を設けた供試体取替RC床版Aに対して1.04倍の等価走行回数が得られた。したがって,軸直角方向および軸方向に幅300mmの間詰部を設けた場合においても,交差部および輪荷重直下の間詰部は弱点とならず耐疲労性が向上する結果得られた。これは,間詰部の交差部は鉄筋量も多く,またコンクリートには超速硬セメントを用いた超早強コンクリートであることから間詰部が強化され,本提案する取替床版の等価走行回数が向上したものと考えられる。
 以上より,軸直角方向および軸直角方向と軸方向に幅300mm(輪荷重幅と同様)を設けて,実橋での施工を考慮した場合においては間詰部上を車両が連続走行した場合においても耐疲労性が大幅に向上することから,実用的な取替RC床版であると考えられる。

5.2 たわみと等価走行回数
   RC床版供試体RCのたわみの増加傾向に対して,供試体取替RC床版AおよびBのたわみの増加は図-5に示すように大幅に抑制されている。たわみが3.50mmに達した時点のRC床版の等価走行回数は4.008×106回,供試体取替RC床版AおよびBはそれぞれ45.100×106,28.873×106回であり,供試体RCの等価走行回数の11.3倍,7.20倍である。
 以上より,軸直角方向および軸方向に間詰部を設けた床版中央は,鉄筋の配置量も多く,橋軸直角方向の主筋には三角形,橋軸方向の配力鉄筋の端部に円形の突起を設けたことから付着力も高く,耐久性が大幅に向上する結果が得られた。よって,本提案する取替RC床版構造における軸直角方向および軸方向の間詰部は,曲げ剛性が向上することから,弱点とならず,耐疲労性が向上することから,実用的な床版構造と言える。

5.3 損傷状況
 図-6に示すRC床版および取替RC床版の損傷状況において,走行範囲を青枠,間詰部を赤枠,輪荷重走行位置が45度底面の範囲を黄色の破線で示した。
 供試体RCの破壊時のひび割れ状況を図-6(1)に示す。破壊時のひび割れ状況は輪荷重走行による2方向ひび割れが発生している。輪荷重走行範囲から45度底面の外側にはダウエル効果の影響によるはく離が発生している。
  取替RC床版Aのプレキャスト部の下面のひび割れ状況は,輪荷重走行位置付近は2方向のひび割れが発生している。また,輪荷重走行位置から45度底面の外側にはダウエル効果の影響によるはく離が見られる。
  取替RC床版Bのプレキャスト部は,床版中央で2方向に間詰部を設け,軸方向の間詰部上を輪荷重走行による疲労実験を行ったものである。輪荷重走行範囲には2方向のひび割れが発生し,輪荷重走行位置から45度底面の外側にはダウエル効果の影響によるはく離が見られる。この軸方向の間詰部上を輪荷重が走行した場合においても,中央の間詰部の交差位置は主筋端部に三角形の突起,配力筋には円形の突起が設けられ,それぞれが重ね継手構造となることから交差部はそれぞれがダブル配置となることから破壊しにくい構造である。破壊は輪荷重走行中パネルAとCの位置で押抜きせん断破壊となった。破壊位置から45度底面の外側にはダウエルの影響によるはく離が発生している。
 以上より,取替RC床版Bは試験体中央で軸直角方向および軸方向に幅300mmの間詰部を設けたが,本提案する継手部構造は弱点とならず耐疲労性が向上する結果となった。よって,押抜きせん断破壊はプレキャスト部であるRC床版で破壊に至る結果となった。

7.まとめ

 鉄筋端部に2タイプの突起を設けた継手部を有する取替RC床版を提案し,輪荷重走行疲労実験による耐疲労性の検証を行った結果,以下の知見が得られた。
(1)鉄筋端部に2タイプの突起を設けた鉄筋を主筋および配力筋方向に配置し,間詰部で重ね継手構造と,実験供試体は施工条件を考慮してパネルを工場で製作した。本構造は施工性にも優れた取替RC床版である。よって,実橋においても,同様の配合条件および施工条件での実施が可能である。
(2)輪荷重走行疲労実験におけるプレキャスト化した取替RC床版において,軸直角方向に間詰部を設けた取替RC床版Aおよび軸方向および軸直角方向の2方向に間詰部を設けた取替RC床版Bは,12.0倍,12.5倍の等価走行回数が得られた。
(3)RC床版および取替床版の軸方向の支間中央のたわみと等価走行回数においては,取替RC床版AおよびBの間詰部は鉄筋の付着を考慮し,280mmの継手長とし,先端部にそれぞれの突起を設けたことから,間詰部の剛性が高まり,輪荷重走行によるたわみの増加が抑制され耐疲労性が大幅に向上する結果が得られた。
(4)輪荷重走行疲労実験における破壊状況は,RC床版および取替RC床版A,Bともに,輪荷重の走行による2方向のひび割れが発生し,輪荷重45度底面の外側にはダウエル効果によるはく離が発生し,破壊は押抜きせん断破壊となった。

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