シリーズ「コンクリート構造物の品質確保物語」㉙
地元業者が取り組む高耐久RC床版の施工(その1)
日本大学 工学部 土木工学科
コンクリート工学研究室
准教授
子田 康弘 氏
4.地元業者の高耐久RC床版の施工に向けた取組み
まず、床版手引きの考えによって確保される耐久性をRC床版に付与するためには、丁寧な現場施工によって施工不良箇所がないよう、品質の高いコンクリートを施工することが肝になる。そこで施工方法の基本事項を遵守するために、表-2に示すRC床版用の施工状況把握チェックシート5)が用いられる。
また、RC床版の施工は、平面部材のために打込み、締固め、および平坦性が求められる表面仕上げとその作業が連続的に途切れることなく行われるが、作業に要する時間は施工時期の気温に応じて打ち重ね時間といった作業間隔は変わる。
施工状況把握チェックシートにある項目を確実に実行するため、模擬床版を用いた試験施工により施工上の課題の抽出と改善を行い、施工中に生じる不具合が発生しないようにしている。要するに“床版施工の練習”が実施される。
写真-4は、コンクリートの締固め作業の状況の例である。ストップウォッチを持った打込み管理者は、バイブレータの挿入時間の管理を行っており、締固め作業者はバイブレータの未挿入箇所がないように、また等間隔の挿入を確実に行うため、50cm間隔の印を目印として締固め作業を行っている。
床版手引きでは、現場施工による高耐久RC床版を具現化するためになすべきことが述べられている。筆者はこの種のマニュアル類が完備されれば、例えRC床版の施工経験に乏しい建設会社が携わったとしても、高耐久RC床版の施工はつつがなく実行されると高をくくっていた面があった。
しかしながら、工事着手前に複数回施工に関するディスカッションを行ったが、やはり水結合材比を45%程度とする高炉セメントコンクリートを床版に打ち込む経験は、地元建設業者にはなく、試験施工を円滑に実行するためには、試験施工に臨む前に高耐久コンクリートへの理解を深める必要があると考えた。そこで、筆者の実験室において、高耐久RC床版の施工とそのコンクリートの特性に関する勉強会(2019年2月4日)を開催し、本施工はもとより試験施工に臨むに当たっての知識を得る機会を設けた。写真-5に示すように、参加者は施工者と一次下請,加えて発注者とPPPであった。
勉強会では、高耐久RC床版の施工目的の説明、また高耐久コンクリートを製造し左官仕上げの感触の確認、均しのタイミングを管理するN式貫入試験の手順の確認を行った。地元建設業者ともなると、技術支援を行う部署を有する会社は、会社の規模にもよるが少ない。写真のような勉強会の実施により、あらためて地域にある大学等がこの役を担うことの意義を感じることになった。