-分かっていますか?何が問題なのか- ㊶コンクリート橋の健全度分析と耐久性向上(その3) ‐本当にコンクリート橋は壊れにくいのか‐
これでよいのか専門技術者
(一般財団法人)首都高速道路技術センター
上席研究員
髙木 千太郎 氏
はじめに
私の連載を読まれている読者の方々が、私は触れる機会が少ないと思って始めた鉄筋コンクリート道路橋のシリーズも今回で第3回となる。今回、独断ともいえる自論で解説しているのは、供用している小径間の道路橋を対象とした健全度の分析と耐久性向上についてである。これまで2回に渡って説明してきたが(リンク先※1、※2)、供用中の鉄筋コンクリート道路橋がどのような状態なのか、健全度を悪化させる要因が何なのか、代表的な変状とは何なのか、読者の方々は朧気ながら分かってきたと思う。
前回までは、過去に行ってきた定期点検の結果を基に、発生している変状と交通量や大型車等のとの相関結果を説明してきた。今回は発生している変状を区分し、それぞれをより詳細に解説するだけでなく、現在供用中の道路橋を対象に条件を付して抽出し、再度詳細調査を行った結果を説明しよう。その理由は、定期点検結果を基にした分析だけでは不確実な部分があり、実態を正しく知るには再度詳細な調査が必要と、私が判断したからである。コンクリート道路橋の健全度について話題提供している時に、幸いと言っては申し開けないが、またまた、私が常々恐れている道路橋の崩落事故がイタリアで起こってしまった。今回の連載にも一部関係があるので、まずは鉄筋コンクリート道路橋の分析についてさわりの部分を説明し、最後に多くの読者が期待しているイタリア・ジェノヴァの崩落事故の話をしよう。崩落事故とは、半月前の8月14日(火曜日)に発生した、『イタリア・ジェノヴァの高速道路A10モランディ橋の崩落事故』であるが、私の知る範囲でこれまた独断で解説し、今回の締めとしよう。それではまずシリーズの第3回目、鉄筋コンクリート道路橋の変状から話を始める。
代表的なコンクリート構造物の変状は、ひび割れ(表面ひび割れ、貫通ひび割れ、構造ひび割れ、拘束ひび割れなど)、はく離(スケーリング、浮き)、鉄筋露出・腐食(表面錆、進行性錆、断面欠損)、漏水、遊離石灰、変色、すりへり・侵食、強度低下、欠損である。コンクリートに発生する変状の発生要因は、外的な作用として、荷重作用、環境因子、反応などに分類できる。荷重作用を考えると、主荷重として、活荷重の増加、地震力などである。また、付加的な荷重としては、不等沈下、傾斜,支持部材の変形、偏土圧、固着力などが考えられる。そのほかには、周辺環境の差異による荷重として、温度荷重、日射、凍結・融解、温度差がある。変状を発生させる環境因子は、塩分(飛来塩分、凍結防止剤、融雪剤)、水分、ガス(炭酸ガス、腐食性ガスなど)、電気(電位差、微弱電流)がある。化学反応による変状発生要因としては、アルカリシリカ反応、中性化、化学劣化、鋼材腐食などである。以上が外的な要因である。
次に、内包的な作用としては、初期欠陥、構造特性に分類することができる。初期欠陥は、鉄筋の被り不足、コールドジョイント、ジャンカ及び養生の不備など、施工的要因といえる。同様な内包的な要因は、初期温度ひび割れ及び乾燥収縮の内外応力と支承の異常、伸縮装置の異常、排水の不備、橋面防水の有無など経年で発生する要因が考えられる。以上が、鉄筋コンクリート道路橋の変状について、聞いたことはあるが、よく分からないと思っている方々(私が最も分かっていないのかもしれないが)を対象に、変状発生の要因を大まかに分類し、整理してみた。その結果が表-1(鉄筋コンクリート道路橋の変状要因と現象の一覧表)である。今更ながら、分かっていると思っていたことを表に取り纏め、分類して思ったのは、施工的な要因(表-1で黄色く着色した部分)が結構多く、特に初期欠陥による変状発生の確率が高いことであった。ここで、コンクリート施工時の初期欠陥について考えてみた。