3.大阪北部地震による被災報道と私の大きな不安
6月18日午前7時58分、大阪府北部(大阪市・北区、高槻市、枚方市、茨木市、箕面市)が観測史上初となる震度6弱の地震に襲われた。地震による被災は、住宅関連施設が多く、私の関係する道路橋の被災は目立った物は無かったようだ。報道されている被災の中で私が注目したのは、小学校のプールに隣接するブロック塀が転倒し、幼い命が失われた被災事故である。
私が今回のブロック塀転倒を含む建物の被災記事を見て思ったのは、阪神淡路大震災の教訓は隣接する大阪には活かされていなかったと感じた。行政側の耐震施策について、またしてもリスク管理の甘さが露呈し、過去に起こっていないのだから起こるはずがないとの判断で対応、措置を行わなかったことによって、二つの貴重な命が失われしまった。私はこれまで何度も、この種の事故について警鐘を鳴らしてはいるが、不幸にして、またもや行政のリスク管理が疑われる事象が起こってしまった。行政技術者であった私としては、非常に残念である。
今回のブロック塀転倒事故に関して、橋梁やトンネル点検の将来を考えると、別の面で不安になってきた。その理由は、基準不適格構造物であった今回の転倒したブロック塀を、市の職員が点検を行っていたとの記事を読んだ時である。ブロック塀の点検は、無資格者(建築士の資格を保有していない)が行ったこと、それも点検を行うのに、目視とたたき点検であったとの報道概要であった。国(総務省)が全国の地方自治体に求めた「公共施設等総合管理計画」策定は、高齢化施設を把握し、危険な施設を効果的・効率的に改善する計画を各地方自治体が内部検討し、自主策定されるために行ったのではないか。当然小学校の校舎及び付属施設は、公共施設である。また、報道で指摘されたように、点検が目視と叩き点検が不十分であるとの解釈ならば、鉄筋の有無と位置を非破壊で調べる場合、例えば、超音波、弾性波、レーダーなどで行うのが適当であると判断しているのであろうか? 拡大解釈すると、今我々が道路橋に行っている、近接目視、叩き点検では安全確保には不十分であるとの指摘なのかとも思った。先の報道を見て私は、基準不適格構造物の改善とともに、安全性を適切に確認できる点検・調査方法を確立しなければ、いずれ我々が報道のターゲットになるのでは、と不安がよぎった。このようなことから、社会基盤施設、特に道路橋の点検・診断技術とは何であろうかと、夜も寝ないで考えさせられ、ここのところ熟睡できない毎日である。よくよく考えると、私が熟睡できないのは熱帯夜であるからか、いや歳のせいかもしれないが。(2018年7月1日掲載、次回は8月1日に掲載予定です)