-分かってますか?何が問題なのか- ⑫「モニタリングの現状と課題―持続力と議論が必要―」
これでよいのか専門技術者
(一般財団法人)首都高速道路技術センター
上席研究員
髙木 千太郎 氏
ポステンPC箱桁の場合
I-35W Saint Anthony Falls Bridge
3.I-35W Saint Anthony Falls Bridgeのモニタリングシステム
I-35W Saint Anthony Falls Bridgeは、橋長371m(1,216フィート)、最大支間長154m(504フィート)の構造形式がポストテンション・プレキャストコンクリートボックスガーダー橋である。
I-35W Saint Anthony Falls Bridgeに採用されているモニタリングシステムは、“smart-bridge” systemと呼ぶヘルスモニタリングである。橋には、500を超えるセンサが設置され、建設時から現在まで種々なデータを取っているとのことである。取り付けているセンサは、ワイヤひずみゲージ( VWSGs )、サーミスタ、光ファイバ振動センサ( SOFO )、抵抗ひずみゲージ、加速度計、リニアポテンショメータ、及び腐食監視センサである。I-35W Saint Anthony Falls Bridgeのモニタリングシステムの詳細は、MinnesotaDOTから出されている“Instrumentation、 Monitoring、 andModeling of the I-35W Bridge”Catherine E。 French、PrincipalInvestigatorDepartment of Civil EngineeringUniversity of Minnesota、August 2012(ミネソタ大学キャシー教授が主研究者)を読んでいただくとしてMinnesotaDOTの行政技術者(名前は公表できないが)が3月中旬に私に説明した現状の評価について下記に示す。
腐食監視センサは放棄した状態
鉄筋腐食に関する測定にこだわり
「I-35W Saint Anthony Falls Bridge架け替え時には、上部構造及び橋脚に、モニタリングするための計測装置を設置している。私は、2か所のドリルシャフトに計測装置を付け建設時は計測していたが、現時点では計測・分析されていない。このシステムは、 南フロリダ大学のGray Mullinsが行っていたが私にはよく理解できない。」・・・役人らしい発言。「上部構造には500以上の計測ゲージが設置してある。我々は、大規模な嵐がミネソタを襲った際に橋梁上の動的システム(加速度計及びリニアポテンショメータ)はおそらくアースの問題であると考えているが機能を停止した。しかし、静的システムは多くの貴重なデータを取ることができている。光ファイバー振動センサおよび腐食監視センサは、それぞれの独自のシステムとして計測している。 光ファイバー振動センサは、静的または動的な計測機能を持って作動している。我々が期待していた腐食監視センサは機能せずに失敗に終わっている。我々は、測定値が意味するように、データを計測・分析が何故できなかったかについて関連する情報を得ることはできず、腐食監視センサは放棄した状態にある。」Minnesota DOTの技術者は、鉄筋腐食に関する測定にかなりこだわっていて、現在ここに示した“Corrosion Rate Assessment”について私がコメントを求められている。
「現在の研究の多くは、上部構造のゲージに焦点を当てている。対象橋梁の有限要素モデルを構築し、実橋載荷試験によって有限要素モデルを検証/較正することとし、そのために原設計条件に適合するトラックを使った検証を行った。その結果、計算モデルと実測定値は、仮定条件に概ね一致し、設計の仮定を検証として十分有効に機能した。」とI-35W Saint Anthony Falls Bridgeの設計と実荷重による変位を比較し、設計の正しさを示した。
着目している事象はクリープ現象
データ確認により最適なクリープモデルを決定したい
「上部構造の種々なゲージはまだ計測中である。自動化されたプログラムは、計測データから確認し、設定した温度に対する期待値との比較検討されている。計測した値が予測値(期待値)から大きく逸脱した状態となった場合は、警告表示をするシステムとなっている。また、橋梁上で行っている計測は、橋梁の垂直変位、短期的な挙動及び長期供用に関して調査する目的で加速度計のデータによって確認をしている。」「Minnesota DOTとして、I-35W Saint Anthony Falls Bridgeに採用した箱桁橋に着目している事象はクリープ現象である。橋梁が経年劣化すると今回計測しているデータを確認することによって、独自で当該形式の道路橋に最適なクリープモデルを決定することができるようになると考えている。」とコンクリート橋の課題をクリープ(大学では、クリープと収縮と言っているが)としている。
東京ゲートブリッジと同様の課題を抱える
データ計測と日々の収集量にある程度の制限必要
「私の同僚が述べたように、当該橋梁に関して活荷重と比較して熱による影響がはるかに大きいことは明らかである。計測システムが建設時にセットされ、データ計測及び転送が開始されてしばらくすると、動的システムは過剰な速度で計測データ送り始め、直ぐにハードディスクが容量を超える状態となった。それ以来、データ計測・転送の規模を縮小し、現在まで計測を継続的に行っている。また、静的システムは、動的システムと比較してそれほど膨大な量の計測データを収集しているのではないので、当初と同様な常時稼働状態にある。」と、東京ゲートブリッジと同様にデータ計測と日々の収集量にある程度の制限が必要となるなど同様な問題を抱えていることが明らかとなった。