道路構造物ジャーナルNET

シリーズ「コンクリート構造物の品質確保物語」⑦

寒中コンクリートを用いる構造物の品質確保

八戸工業大学
工学部土木建築工学科
教授

阿波 稔

公開日:2016.03.16

2.青い森の橋ネットワークの設立

 青森県内では「青い森の橋ネットワーク(通称:青森橋ネット)」が2012年5月より活動している。この組織は、青森県内の橋梁長寿命化を目的とした産官学の連携組織であり、地域の技術者による地域のための調査研究(自己研鑽)を通じて、良質な橋梁インフラの整備・維持と地域の安全・安心な暮らしを支え、地域社会の持続可能な発展に貢献することを主眼としている。青森橋ネットは、県内の研究機関(八戸工業大学、弘前大学、八戸工業高等専門学校)と民間企業(建設会社,コンサルタント、材料・生コンメーカー等、約60社)が活動の中心となり、行政機関(青森県、建設技術センター、国土交通省青森河川国道事務所等)もアドバイザーとして参画している。また、青森県では、地域特有の課題に対応できる土木・建築技術者の継続的な育成のために、産官学連携による土木建築系教育に関する研修会の活動を2008年から開催している5)。このような研修会活動により形成された包括的な人的ネットワークも青森橋ネットの活動・推進に重要な役割を果たしている。

 設立初期に積極的に取り組んだことは、老朽化したコンクリート橋梁の詳細調査(静的載荷試験による構造性能の評価、各種非破壊試験、コンクリートコアによる耐久性試験等)であった(写真-4、写真-5)。そして、目視による健全度評価では得られない橋梁の損傷状態をより詳細に把握することにより、積雪寒冷地域におけるコンクリート橋梁の問題点を整理した。それらの調査の帰結として、コンクリート構造物の劣化進行は、厳しい凍結融解作用や凍結防止剤などの影響も含めた環境作用や使用材料以外にも施工要因の影響を大きく受けることを関係者の間で改めて認識することになった。
 青森橋ネットの主な活動内容については、日本コンクリート工学会「データベースを核としたコンクリート構造物の品質確保に関する研究委員会」(委員長:田村隆弘)の報告書2)や既報3)、4)にも掲載されているので参照されたい。

3.青森河川国道事務所管内のコンクリート構造物の調査

 青森橋ネットの活動の一環として青森河川国道事務所と連携し、青森県内のコンクリート構造物の品質確保の取組みを行っている。この青森での品質確保の取組は2013年度から本格的に開始された東北地方整備局における復興道路の品質確保の機運の高まりとも呼応し展開された。まず、これまでに青森県内で施工されたコンクリート構造物の品質の現状評価を行うことを目的に、現在建設が進められている上北道路(青森県上北郡六戸町から七戸町に至る高規格幹線道路、一部供用)において表層品質調査を2013年11月に実施した。対象構造物は、4年程度以内に上北道路で施工されたコンクリート構造物(ボックスカルバート6基、橋梁下部工6基)とし、目視評価と表層透気試験等を実施し、表層品質を簡易的、定量的に評価した。目視評価にあたり、当該地区の多くの構造物にて面的な微細ひび割れが確認されたことから、細田らが提案する①沈みひび割れ、②表面気泡、③打重ね線、④型枠継ぎ目のノロ漏れ、⑤砂すじ、に加えて⑥面的な微細ひび割れ(表-1)も評価することとした。また、これらの調査期間中は、青森河川国道事務所管内の職員や青森橋ネットのメンバーによる現地見学会を開催し、構造物の品質評価技術の勉強会としても活用した。

 これら上北道路の調査では、②表面気泡と③打重ね線、⑥面的な微細ひび割れの評価点が全体的に低い傾向にあった。特に打重ね線については、経年の乾燥収縮により、ひび割れ状に進展している部位も複数の構造物で確認された(写真-6)。このことから、今後進められる工事においては丁寧なコンクリートの打込み・締固めの実現、ブリーディングの抑制あるいは施工時の適切なブリーディング処理等を確実に行うことが重要と判断された。

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