道路構造物ジャーナルNET

-分かってますか?何が問題なのか- ⑪「想像力と博打根性」

これでよいのか専門技術者

(一般財団法人)首都高速道路技術センター 
上席研究員

髙木 千太郎

公開日:2016.03.01

3.自分が夢中になる仕事を見つけよう 

 私は幸いに「好きこそものの上手なれ」を自己満足で押し通し、長い間「橋梁」に関連する仕事を続けてきている。確かに上司に恵まれ、仕事と環境、技術を論ずる仲間にも恵まれてきた。自分の「味方」もいるがその倍以上の「敵」もいる。であるから「橋梁」に関連する仕事を続けてこられたのかもしれない。
 私の大きな転機となったのは、当時全く注目に値しなかった「橋梁の点検要領」を独自で策定する作業を1982年(昭和57年)から始めたことにある。たかが「橋梁の点検要領」の取り纏めぐらいとお考えの方は多いと思われるが、手を付けてから5年を要して1988年(昭和63年)にようやく地方自治体初の「橋梁の点検要領」の発刊となった。その間、国内外の関連資料の調査はもとより、既設橋梁の変状調査方法の試行と開発、静的及び動的載荷試験、応力頻度測定の実施、非破壊検査技術の試行、下部探査技術の試行等新たな技術にチャレンジし続け、無となった計測等は数多くある。しかしこの時、「維持管理」に夢中になって今自分の基礎となる種々なことを、徹夜してまでやり遂げてきた。要は、夢中になれば、苦労も苦労ではなくなると言うことである。またまた、私の好きな広中先生の言葉をお借りすると「人は、何かに夢中なっている時は、たとえ苦労であっても、苦労を苦労と思わないのだ」がある。私にとって、社会人として脂がのりきる時期にこの貴重な経験をしたことが大きかった。だれも相手にしてもらえなかった「橋梁の点検要領」策定や「維持管理」への取り組みが、その後の、先に示した東京港連絡橋・新交通システム建設室時代に培うことが出来た新たな自分の知識育成と徹夜、徹夜の積み上げ積算作業等その都度生まれる仕事に夢中になれ、苦労を苦労と思わない性格へと変わり、活かされた原点であると言える。
 今まさに、東日本大震災発災後5年となる震災復興事業への重要な取り組み成果を示す時期、2020年東京オリンピック開催まで4年と数か月となった開催関連施設の完成に向け真剣に取り組む時期、急速に地球温暖化が進み異常気象となった地球環境を如何にくい止めるか具体的で効果的な策をスタートさせる重大な局面等どれをとっても技術者が関与しないことは在り得ない。私が経験し、実践してきたことは社会への影響は微々たることであるかもしれない。しかし、多くの技術者に声を大にして言いたい。苦労を苦労とも思わないような自分が夢中になる対象を取り巻く仕事環境から早く見つけ、大きく柔軟な想像力とここぞという時に打って出ていく勇気「博打根性」を持って先に示した重大な課題解決に向け是非チャレンジしてもらいたいと。
(次回は4月1日に掲載予定です)
これでよいのか専門技術者シリーズ
⑩「橋梁形式選定についての私見と担当技術者への願い」
⑨「私見 勝鬨橋再跳開の可能性とその効果」
⑧点検はこれからが勝負
⑦PC桁の欠け落ち損傷
⑥溶接構造の品質保証について
⑤橋と景観
④独創のコツ、なぜ研修制度は機能しないのか
③「道路メンテナンス会議」は本当に機能し始めたのか
②「道路橋の変状と架け替え」について大きな疑問
-分かってますか?何が問題なのか-①

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