シリーズ「コンクリート構造物の品質確保物語」①寺小屋から全国へ
それはコンクリートよろず研究会から始まった「コンクリート構造物の品質確保とコンクリートよろず研究会」
徳山工業高等専門学校
副校長
土木建築工学科 教授
田村 隆弘 氏
150人収容の会場で人が溢れる
5.講習会
2年間(12回の研究会)のひび割れに関する研究成果は、平成16年11月に「コンクリートのひび割れ予防対策(あなたにしかできないことがある)」をテーマに講習会として発表した。テキストは、以下のような構成で「コンクリート工事に関わる各プレイヤーがそれぞれの立場でできるひび割れ対策の紹介(2章)」を主題として整理した(写真11)。
目次: 第1回講習会「コンクリートのひび割れ予防対策」テキスト
1章 コンクリートに発生するひび割れについて
1.1 はじめに
1.2 ひび割れの種類と発生時期
1.3 ひび割れの種類とこれに対応する業種
1.4 コンクリート及び鉄筋コンクリートの性質
1.5 ひび割れの発生メカニズム
2章 各分野におけるひび割れ予防対策
2.1 はじめに
2.2 ■設計段階でできること
2.3 ■材料に関連してできること
2.4 ■配合・生コン製造管理段階でできること
2.5 ■施工現場でできること
2.6 ■供用期間にできること
3章 ひび割れ調査法
4章 ひび割れ補修法
付録 温度ひび割れの予測
写真11 講習会テキスト
講習会テキストの「はじめに」には、講習会開催までの経緯や開催趣旨を以下のように説明している。
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はじめに
コンクリートひび割れ問題へのアプローチは、これまで各方面から調査研究が進められ,今日では、その原因の多くが突き止められてきました。しかしながら、実際の現場では、さまざまな要因から今なお多くのひび割れが発生し,その補修や構造物の耐久性が問題視されています。
本研究会でも、生コン業者に寄せられる苦情や、施工時のひび割れ発生等々いろいろな現状報告、事例報告がなされました。そして,研究会を重ねるにつれ、ひび割れが、いつ、どのような条件で発生するのかが明らかになり、そして、それぞれの立場(材料メーカー、生コン工場,施工現場等々)において対策を工夫して努力していることが理解できました。これまでは、それぞれの立場で示方書や指針等をひもときながらひび割れ問題に立ち向かって来ましたが、お互いの「ひび割れ対策技術」を知ることで、より効果的なひび割れ対策が可能となることは明らかです。
ここでは、改めてひび割れの発生原因から、ひび割れを抑制する対策、そして、補修方法に至るまで研究会参加者が自身の知識、情報を発表し、お互いに学んだことを「各分野におけるひび割れ予防対策」として整理してみました。講習会参加者の方々には、既知の話題も多々あると思いますが、自分自身でできるひびわれ対策を再認識すると同時に、別の分野の技術についても知識を深めていただき、コンクリート工事に関わる皆さんの協力をもってひび割れ防止対策にご尽力頂ければ幸いです。
最後に、まだまだ未熟な会で不勉強な点も多々ある中での講習会であり、より専門的な立場におられる方々からのご助言を期待しています。
本テキストの構成
本テキストは、以下のような4つの章で構成しています。
まず、第1章では、コンクリートの発生するひび割れについてその種類を分類したものを示し、主なひび割れについて種類毎に発生のメカニズムを解説しています。
第2章は、本テキストで特に意識した点であり本テキストの特色とも言えますが、各種のひび割れに対して、それぞれの業種でどのような対応や研究が行われているのかを業種毎に示しています。ここでは、業種を「設計」「材料」「配合」「施工」「管理」と分類しました。是非、自身に関連した業種のみならず他の業種についても一読いただき、ひび割れ抑制のための技術について理解を深めてください。
そして、第3章では、ひび割れの調査方法を、第4章では、発生したひび割れの補修方法について紹介しました。本講習会のメインテーマである「ひび割れ抑制」とは多少異なりますが、参考にしていただけると幸いです。
最後の付録では、温度ひび割れについて詳細にまとめた資料を添えました。
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クチコミで参加者を募集し、70~80人集まれば成功かなと思っていたところ、150人収容の会場が人で溢れてしまい「本日は満席のため予約のない方は次の機会にお願いします」と入場制限する状況になってしまった(写真12,13)。実は、コンクリートよろず研究会としての講習会は、この時以後行っていない。しかし、ひび割れ問題に対する研究会の研究成果は、その後、山口県内のみならず、日本コンクリート工学会、土木学会の活動へと発展し、著者自身も全国各地で講演の機会を頂いている。
写真12 講習会開会挨拶
写真13 講習会風景