道路構造物ジャーナルNET

シリーズ「コンクリート構造物の品質確保物語」①寺小屋から全国へ 

それはコンクリートよろず研究会から始まった「コンクリート構造物の品質確保とコンクリートよろず研究会」

徳山工業高等専門学校 
副校長 
土木建築工学科 教授 

田村 隆弘

公開日:2015.09.16

勉強しにくるのではなく・・・・・・
 松下村塾的「みんなが先生、みんなが生徒」

2.コンクリートよろず研究会の目的
 研究会では冒頭に「最近、コンクリートに関するさまざまな問題が聞こえてきている。コンクリート構造物は、関わるプレイヤーが多いことから原因がどこにあるのか分かりにくいし、一人のプレイヤーで解決できる訳でもない。ぜひ、参加者一同、それぞれの立場で出会った課題やそれに対するとった解決策を紹介していただき、共有の情報とすることで問題解決しましょう。ここにお集りの皆様には、『勉強しに来ました。』、『話を聞きに来ました。』ではなく、『自分の持っている問題解決のためのノウハウを広く活用してもらいたい。』という思いで参加してください。」と話した。
 そして、本会の目的を「今日の、あるいは未来のコンクリートに関するさまざまな問題について、これに関わる各方面の技術者・研究者で多方面に議論することで、問題解決の方策を見出し、この成果を共有の財産として広く公開する。」として活動をスタートした。

“軸”となったひび割れ問題

3.ひび割れ問題へのアプローチ
 第1回研究会で当面の“軸”となった研究テーマが、ひび割れ問題だ。様々な話題を寄って話し合うのが“よろず”研究会の設立趣旨だが、何か活動の軸となるテーマを設定することが、参加者のモチベーションを維持するには都合が良いのではと考えた。2ヶ月に1回のペースで開催した研究会では、実際にはひび割れだけに囚われず「コンクリートの色について」や、「生コン製造に寄せられるクレーム」などの様々な話題も提供されたが、ひび割れに関する話題提供や議論は、毎回のメインテーマとして活動した。
 そうして約1年間ひび割れに関する情報交換を続けた15年12月の会議で「これまでの研究会でひび割れに関する様々な知見が得られた。この後、1年間、さらに研究を進め2年間の活動の成果を講習会という形で発表しよう。」とゴールを定めた。

口コミで広がる活動
 大手メーカーからの有益な情報も集まるように

4.研究会の活動状況
 活動はクチコミで広まり、当初が15人程度だった研究会員は、講習会を開催する頃には約40人に増えていた。研究会に会費はなく入退会の規則もない。基本的に参加は自由である。ほぼ確実に2ヶ月に1回開催した研究会では、施工に携わる参加者は現場での経験(トラブル)を披露してくれた。生コン製造者は、変化する骨材事情の話題や品質維持のための努力の様子を紹介した。セメントメーカーからは超高強度コンクリート(ダクタル)や低熱セメント等の話題を提供してくれた。コンサルタントはコンクリートの調査や診断の様子や補修材料・補修方法をプレゼンテーションしてくれた。そうしたコンクリートの最先端を行く研究動向や技術情報、そして、現場の生の声を広く集めて共有することができた。首都圏にいて土木学会や日本コンクリート工学会の委員会等に所属すると、最新の技術情報や業界の動向関する情報に数多く触れる機会があるが、地方にいるとなかなかそうはいかない。そうした意味でも大手メーカーの参加者からの情報はとても有益なものであった。
 会の活動拠点は基本的に徳山高専であったが、会員が所属する企業で企画した現場見学会や、平成23年に国民体育大会を控えた山口県の道路整備関連の工事現場に見学に出かける等、イベントも工夫しながら学外においても研究会を開催した。
 当初は少数精鋭で討議形式で研究会を行うことを想定していたが、会員数が増えてからは、講義形式の集まりになってきた。例えば、長岡技術科学大学から下村先生をお招きして、コンクリートの乾燥収縮やクリープについて講話頂くなどした。しかし、「よろず研究会」ということで、遊び心も大切にしながら楽しくも緊張感のある会議運営を心掛けた。

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