道路構造物ジャーナルNET

-分かってますか?何が問題なのか- ④独創のコツ、なぜ研修制度は機能しないのか

これでよいのか専門技術者

(一般財団法人)首都高速道路技術センター 
上席研究員

髙木 千太郎

公開日:2015.08.01

何が今国内外の技術者に欠けているのか

3.あなたは専門技術者ですか?

 行政技術者も当然であるが、企業の専門技術者の技術力は本当にあるのであろうか?  道路橋の点検・診断を事例に話を進める。全ての施設を対象に近接目視点検・診断を行うことは重要である。施設の状態を適切に把握する点検を行うのは高度な知識と経験を持った技術者が必要で、それには高度な技術を持ち、豊かな経験と多岐にわたる想像力を持っている国が認めた「技術士(建設部門)」が適当である。いずれも正しい????

 ここに示していることは、確かに全ての要件を満たし、高い技術者倫理能力を持っている専門技術者であれば、問題はないのかもしれない。しかし、現実は異なっている。

 ここに事例として示す道路橋は、幹線道路の橋梁である。

写真-3 箱桁端部の支承に発生した亀裂

写真-4 塗膜を剥いで亀裂規模を計測

写真-5 専門技術者が行った診断結果

 当該橋梁は、1ボックスの鋼床版橋である。どのような技術者が見ても、桁端部の支承部付近に発生した亀裂であれば、進展すると致命的な損傷となると評価するはずである。

 20数年前に規定した定期点検要領にも健全か危険の判定、2者択一の判定を行う旨記述しているし、損傷の評価、判定として徹底していると考えていた。  しかし、現実は、ここに示すように重大な過ちを犯した診断結果となっている。亀裂判定の「e」でなく、腐食判定の「d」である。点検結果を再チェックした時の驚きと急遽緊急対策を行ったのは言うまでもない。ここに示す損傷は、見えにくい、見逃しやすい損傷ではない。これが、優れた専門技術者と評価されている実態である。技術者育成、資格認定制度、いずれも機能すれば好ましい状況となるはずである。何が今国内外の技術者に欠けているのかを考えてほしい。

 全ての技術者がイギリスのブルネルになることはできないが、ブルネルの志を国内の多くの技術者が生かし、それに向けて研鑽することは可能である。

(次回は9月1日に掲載予定です)

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