機能しない研修制度
2.研修で技術者育成は可能か?
現代の新たなタイプのエンジニア、土木技術に関係している技術者はどうであろうか?今、「メンテナンス元年」、「最後の警告」と維持管理の重要性を訴える言葉が世の中に踊る。しかし、現実との差異は大きく、社会基盤施設のメンテナンスとはどのようなことかを正しく理解している人は皆無であると思っている。「メンテナンス元年」にもっとも早く反応し、実践しなければならない行政技術者は確実に育つのであろうか?
そのために行政組織が行っている研修制度がある。行政技術者向けの研修制度は、組織固有のもの、大学等教育機関が行うもの、国が主導となって行うもの、民間団体が行うものなど山ほどあり、いずれの研修も内容は多岐に及び、初級から高度までいくつものランクがある。研修の目的は、職員のスキルアップである。社会基盤施設の計画、設計、施工、工事監督、検査、マネジメント、環境保全、維持管理、補修・補強・・・書くことが出来ないほどある。 研修受講者は、配布された資料を読み、講義をしっかり聞けば少しの努力でその道の専門技術者になれるはずである。私が知る限りではほとんど機能していないのが現状である。なぜか、技術者の育成に目覚めるのは若い時でなく、ある一定レベルの立場になると執行第一主義から180°方向転換し、人材育成研修重要派、現場主義になるのである。
指示された研修の新たなカリキュラムを組むのは、統括する立場の管理職が旗を振り、それに関係する人が対応して短時間に総動員で研修資料を作成、目的も内容も分からない、技術の必要性も理解していない立場の職員が説明・講義するのである。
教える方がプロでなく、受講する方に意欲が無い 職場に戻れば集中的な無償の残業
であるから、聞く方も棒読み状態の研修を何が何だかわからずに無駄な時間を過ごしているのが現実である。なぜ真の研修が行えないのかは、教える方がプロでなく、受講する方に意欲が無いからである。国も地方自治体も同様と思うが暇な時に、暇な人が研修を受けるのであって、多忙で嫌でも職務に専念しなければならない人は研修を受講できない。研修を受けることが職務となると貴重な研修も身につかないのは当然の理屈である。
日々の職務に追われているキーパーソンである職員がスキルアップに必要な研修を受講するならば、職場に戻って集中的な無償の残業を行わなければならなくなる。上司が指示するから止む無く研修を受講するか、暇だから、仕事が無いから研修の席を埋めるために受講する今の状況では、必要な技術は全く身につかないのは当然である。
コツコツ努力は自ら行うもの、それを評価する上司がいなければ研修制度は絵に描いた餅である。