道路構造物ジャーナルNET

-分かってますか?何が問題なのか- ③「道路メンテナンス会議」は本当に機能し始めたのか

これでよいのか専門技術者

(一般財団法人)首都高速道路技術センター 
上席研究員

髙木 千太郎

公開日:2015.07.01

3.なぜ教訓は活かすことができないのか?

 日本国内は、一昨年は「メンテナンス元年」、昨年は「最後の警告」と報道受けする言葉が並ぶ。しかし、メンテナンスの重要性を総論では賛成しているが各論となると全く状況は変わる。話は「道路メンテナンス会議」にもどるが、  あれほど盛り上がったメンテナンスであるが地に足がついていないのが現状である。大手ゼネコン役員との合同会議で、著名なゼネコンの役員がメンテナンス工事に対する受注について「1件20億円で工事個所を分散化しないと受注する気はない」との発言があった。国内のメンテナンス事業への正しい理解があるのか大きな疑問を持つと同時に、メンテナンスに取り組んでいる姿勢のみ見せているのだと感じた。  事実、橋梁の落橋防止システム関連の工事を4か所まとめて約3.5億円で発注し、指名に大手ゼネコンを入れて契約行為を開始したが、入札直前で辞退となった。大手ゼネコン業務としては成り立たないとの回答であった。これが真実である。  先日、とある県で講演会に参加したが、地元の建設会社の技術発表が素晴らしかった。連続桁構造の鉄筋コンクリート床版工事におけるひび割れ処理、養生方法、添加剤等について構造的な解析、施工方法含めて若手技術者が汗を拭き拭き発表を行った。日本を救う若手技術者がここにもいたと安心し、今後に期待を膨らませた。発表をした若手技術との懇談の中で、大手ゼネコンは聞くと「大手ゼネコンは、道路や橋梁、トンネル新設時には蟻が群がるように来ましたが、終わると潮が引くように全ていなくなった。」とのことである。喫緊の課題である予防保全型管理への転換や適切なメンテナンスを行うためには地方の建設会社の技術者を育成することが第一で、大手ゼネコンの机上の空論に付き合っているのは無意味であるとも感じた。国や都道府県の行政技術者は、狭隘な作業空間でのメンテナンス関連工事の実態を把握し、現場主義と10回唱えるよりも1回でも自ら狭隘空間での作業を見てほしい。

写真‐5 狭隘な桁下空間でのコンクリート打設

 次回は、「道路メンテナンス会議」と行政技術の課題について論ずることを予定している。

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