東日本高速道路　維持管理リレー連載⑥

NEXCO東日本の橋梁に関する更新事業の概要　

東日本高速道路株式会社　建設・技術本部
技術・環境部　構造技術課長

本間　淳史氏

東日本高速道路　維持管理リレー連載

公開日：2015.04.16

　（３）予防保全のための高性能床版防水
　RC床版の耐久性に関する近年の研究から、床版防水を設置することが重要であることは良く知られており、冬季の凍結防止剤（塩化ナトリウム）散布による塩害対策としても有効です。旧日本道路公団（JH）では、道路橋示方書で規定される以前の平成10年から床版防水を施工して来ましたが、現時点での床版防水の実施状況としては、供用中の橋梁の半分に満たず、高性能床版防水にいたってはほんの1%に過ぎません。床版上面は舗装により隠れているため、目視等では変状を容易に発見できず、舗装の損傷を補修するために舗装を除去して初めて劣化が確認されることも少なくありません（写真-3）。
　これらのことから大規模修繕にあたっては、損傷が生じていない、もしくは軽微な健全度の高い床版に対して、劣化の進行速度を著しく増加させる原因となる水の浸入を防ぐことを目的に高性能床版防水を実施して予防保全を行います。この場合、床版防水未施工の橋梁を優先的に実施しますが、既に旧タイプの床版防水（グレードⅠ）が施されている橋梁においても、長期耐久性確保の観点より高性能床版防水を実施していきます。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　写真-3　床版上面の劣化

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　図-8　高性能床版防水の模式図

　　　　　　　　　　写真-4　高性能床版防水の施工例

　床版防水の施工において、床版および地覆面の変状は,防水層の性能に大きく影響を与えることから、防水工施工前の床版・地覆面は変状のない健全な状態でなければなりません。このためNEXCO東日本では、実際の現場における下地処理についてどの段階でどのような処理が必要か、常磐道の建設事業における舗装工事などを参考に、NEXCO総研とも連携しながら、事例写真とあわせて現場管理の手引きとなるような資料を取りまとめています。

　　　　　写真-5　研削機による欠損部等の補修例　　　　　　　　　　　　　　　　写真-6　壁高欄の立上り部の補修例

　４．最後に

　わが国の高速道路は、昭和38年に名神高速道路が開通してから50年余の間に、順調にネットワークの整備を進めて来た結果、利用台数は約700万台/日、大型車の通行台数も約200万台/日となり、一般道路や鉄道を含めた国内の全延長の1％に満たない高速道路が、国内陸上輸送の約半数近くを分担するに至り、国民生活や経済活動に欠かせない存在となっています。
　この間、旧日本道路公団から民営化後のNEXCO3会社は、高速道路事業を引き継ぐとともに、日本道路公団設立時から先人達が研究開発して積み上げた技術と、それに伴う「より良いものを造る」という技術者の精神を引き継ぎました。また、維持管理の時代に入ってからは、徐々に「適切な維持管理により最小限のコストでより長持ちさせる」という考えに移行して来たともいえます。
　そして今回の更新事業では、「的確な判断と最適な方法により橋梁をリニューアルする」ということになろうかと考えます。建設促進の時代から、維持管理の時代、そして更新事業の時代と、技術者が立ち向かう課題は難易度が上がって行きますが、高速道路を安全で快適に利用していただくこと、将来に誇れる道路構造物を残すという使命はいつの時代も同じです。更新事業を合理的・効率的に実施するために、調査技術、診断技術、設計思想、新しい構造、施工技術など、技術的課題は山積みと言っても過言ではありませんが、これに臆することなく努力し、解決して行くことで、高速道路の将来の健全性の確保だけでなく、それを守る技術者の育成にもつながるものと確信しています。
[参考資料]
1）東日本高速道路㈱,中日本高速道路㈱,西日本高速道路㈱；「高速道路資産の長期保全及び更新のあり方　報告書」高速道路資産の長期保全及び更新のあり方に関する技術検討委員会,平成26年1月22日
2）NEXCO東日本ホームページ；高速道路の更新計画、http://www.e-nexco.co.jp/koushin/