凍結防止剤散布量が約60%増加
スパイクタイヤ禁止前後比で
2.橋梁の劣化要因
NEXCO東日本の更新事業のうち約6割(約5,400億円)は、橋梁の老朽化対策に関するもので、床版や桁の取替え、ならびに高性能床版防水などの予防保全もしくは補修になります。
ここで、橋梁の変状に対して大きな影響を与えると推測される要因は、供用後の経過年数の影響、交通量・飛来塩分量・凍結防止剤散布量などの供用環境の影響、荷重・応力度・構造・材料・施工方法などの設計・施工時の基準やその後の基準の変遷による影響などが考えられます。表-3に示すように橋梁の劣化要因はさまざまであり、基本的には一般的な構造物の劣化要因と同様ですが、ここで高速道路特有の劣化要因について説明を補足します。
表-3 橋梁の主な劣化要因
ほぼ4台に1台が違反車両
厳しい高速道路の使用環境
(1)大型車交通の増加と過積載車両の実態
高速道路ネットワークの拡充に伴い大型車交通が増加するとともに、平成5年(1993年)の車両制限令の規制緩和により車両の総重量が増加する傾向も見られており(図-1)、高速道路の使用環境が更に厳しいものとなっています。
表-4は高速道路における総重量違反車両、いわゆる過積載車両の実態を表したものです。高速道路の本線における軸重計の測定結果によれば、大型車両の約24%、すなわちほぼ4台に1台が違反車両であることが分かります。また図-2は、高速道路の入口料金所における違反車両の取締り状況を表したもので、3ヵ年平均で約15%の総重量違反車両を確認しています。
図-1 東名・名神の通過都県における貨物保有台数の推移
表-4 本線軸重計データ(1995年)による推計の総重量違反車両の割合
図-2 入口料金所での取締り台数
(2)積雪寒冷地における凍結防止剤散布
高速道路の維持管理におけるもう一つの課題が、積雪寒冷地の供用延長の増加と凍結防止剤の散布です。
平成2年制定、平成6年より罰則規定施行の「スパイクタイヤ粉じんの発生の防止に関する法律」により、スパイクタイヤの使用が禁止されました。
図-3では、この影響により高速道路における凍結防止剤(塩化ナトリウム)の使用量が増加していることが伺えており(シーズン平均33t/km→53t/km)、特に凍結しやすい高架橋は散布量が多くなる傾向にあるため、構造物の重大な劣化要因となっています。
図-3 凍結防止剤使用量の推移
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