3.橋梁の変状状況と対策事例
3.1 変状状況
凍結防止剤による塩害は管内全域で発生しており、北海道や東北支社と同様、伸縮装置や排水管からの漏水による上部工桁端部および橋台・橋脚の劣化、また路面からの浸透水によるRC床版の劣化が著しい。飛来塩分による塩害は、北陸道の朝日IC〜上越IC、柏崎IC〜柿崎IC間で発生している。山間部では凍害、新潟市近郊区間ではASRによる変状が発生しており、これらの変状のほとんどが塩害との複合劣化である。
以下に、管内の特徴的な劣化・損傷事例と対策事例として、波浪や飛来塩分による影響の著しい北陸道 親不知海岸高架橋、凍結防止剤による塩害に対して補修を行った上信越道 六月高架橋の事例を紹介する。
3.2 親不知海岸高架橋の塩害対策
親不知海岸高架橋は、1985年~1987年に建設された、延長3,373㍍のPC橋である。1984年に発刊された道路橋塩害対策指針(案)・同解説を基本に、鋼材かぶり厚の増加やW/Cを低減した密実なコンクリートの施工、表面積の小さい上部工断面の採用、エポキシ樹脂塗装鉄筋の試験的な採用など様々な塩害対策が行われている。しかしながら、供用後の点検や追跡調査により、下部工に塩害による変状や想定以上の塩分の浸透が確認された。このため下部工は、塩分の浸透を抑制するためコンクリート塗装による表面被覆を基本とした対策を1998~2001年に行っている。塗装仕様は表-3に示す通りで、波浪の影響を受ける箇所は、中塗りを耐摩耗性に優れたポリブタジエンゴム系とした塗装仕様Ⅰ、それ以外は塗装仕様Ⅱとしている。なお、損傷箇所では、劣化部分を除去し、鉄筋の補完、ポリマーセメントモルタル(以下、「PCM」)による断面修復を行った後、表面被覆を行っている。
表-3 塗装仕様
また、上部工の一部でも、建設時に予測した値以上の浸透塩分量が確認され、将来、鉄筋位置での塩化物イオン濃度が発錆限界塩分物イオン濃度(以下「発錆限界」)を超えることが予測されたため対策を実施している。対策工法の選定は、図-4に示す選定フロー4)により行っている。塗装仕様は、実橋試験施工、暴露試験で得られたデータを参考に表-3の塗装仕様Ⅱを採用している。各対策工法は、浸透塩分量の調査結果を基に、対策後の再拡散シミュレーションを行い、建設後100 年経過時点で、鉄筋位置で発錆限界を超えない、または防錆剤が既設コンクリートへ浸透し、対策後3 年以内に鉄筋位置で防錆雰囲気(亜硝酸イオンと塩化物イオンのモル比が0.8 以上)が形成2)されることを確認のうえ選定している。
PC橋では劣化が進行すると補修が困難となるため、健全なうちに予防保全を行うことが重要である。今後も浸透塩分量等の詳細調査を進めながら、予防保全により長寿命化を図って行く予定である。
図-4 上部工における対策工選定フロー
3.3 親不知海岸高架橋の波浪対策、摩耗対策
親不知海岸高架橋では、建設時には、緩傾斜護岸工による浸食対策や海中橋脚では消波ブロックによる波浪対策、砂礫の混じった波浪による摩耗対策として、橋脚躯体は、鋼板+クロロプレンゴム、フーチングは、増厚+鋼板などによる対策を行っている。しかし、予想以上の厳しい波浪の影響により消波ブロックの消失、耐摩耗層の損傷のほか、海岸浸食により供用15年後には緩傾斜護岸が消失(写真-1)したため、順次対策を行ってきている。
写真-1 緩傾斜護岸の消失と擁壁護岸による対策
浸食に対する抜本的対策として、擁壁護岸+25t消波ブロックによる対策(H15~19年、写真-1)を実施したが、その後、 消波ブロックの流出や擁壁護岸工の一部で摩耗等の損傷が確認された。このため、摩耗箇所の水中コンクリート充填による補修、鋼板による補強、消波ブロックの流出対策として40t 消波ブロックによる被覆(平成22 年~ 図-5、図-6)を行っている3)。
図-5 擁壁護岸の摩耗状況と補修・補強のイメージ図
図-6 40t消波ブロック被覆による補強イメージ図
海中部に位置する橋脚躯体の耐摩耗層の損傷事例を写真-2に示す。鋼板に圧着されたクロロプレンゴムおよび鋼板が損傷し、橋脚躯体コンクリートが摩耗した事例である。これらの損傷に対しては、高強度コンクリートによる巻立て、PICフォーム(ポリマー含浸プレキャストコンクリート埋設型枠)(写真-3)、ダクタルフォーム(超高強度繊維補強コンクリート埋設型枠)を用いた巻立て工法にて補修を行っている。
写真-2 橋脚の耐摩耗層の損傷事例 写真-3 耐摩耗層の補修事例(PICフォーム)
海中部のフーチングの摩耗事例、対策事例を写真-4、5に示す。これら摩耗に対しては、損傷した鉄筋の補修並びにフーチング上面、側面の増厚による対策を基本に、表面に鋼板や防舷材(ゴム)を設置して防護するなどの対策を行っている。
写真-4 フーチングの摩耗事例 写真-5 増厚、防護鋼板による対策