3.補修・補強事例
(1)鋼橋(RC床版)
①応急処置
橋梁上の舗装面にポットホールが発生すると、床版上面の劣化損傷部分をはつり、超速硬コンクリートで補修するのが基本であるが、短期間で再び損傷してポットホールの発生が頻発する事態に至っている。
雪氷期間中にもポットホールが発生し、その対応が現場を悩ましている。これを解決するために、耐久性のある補修材としてポリマーモルタルを試行的に採用している。(写真‐7)一定の強度を保ちつつ、弾性係数が既設床版コンクリートより小さいため、なじみが良いと考えられている。
なお、はつり面には既設コンクリートを緻密化する含浸材、および接着剤を塗布している。現在、経過観察を行っているが、約1年経過しているが状況は良好である。
(a)含浸材塗布 (b)接着剤塗布と締固め (c)こて仕上げ
写真‐7 ポリマーモルタルの施工状況
②部分補修
ある程度補修箇所がまとまった時点で舗装修繕工事に含めて、床版の補修を実施している。基本的には床版上面の部分的な劣化損傷部の部分補修であり、上側鉄筋位置まではつり取る「薄層打替」と、床板全厚を打ち抜く「全層打替」を併用している。写真‐8は、ウォータージェットによるはつり作業の状況である。
補修範囲等は、工事前に一部の舗装を開削して推定しているが、工事段階で全面を開削すると大きく変更となる場合も発生している。補修範囲の変更は、工事全体への影響が大きく、工事費用は当然ながら、規制期間も変更しなければならないため、舗装上からの精度の良い調査方法の開発が喫緊の課題である。
写真‐8 東北道・堀内沢橋のWJの状況
③取替工法
増厚工事や床版補修工事を実施しても、再劣化によるポットホールが多発し、耐荷力の低下の恐れがある場合は、プレキャストPC床版に取り替えることとなる。写真‐9は、昨年度に行った綱木川橋の新設床版の架設の状況である。斜角が非常に小さく、かつ仙台宮城ICに位置するためランプの分合流がありバチ形状(台形)となるため、従前はプレキャスト化には不向きな構造として、場所打ちコンクリートでの打替えが通常であったが、工期を短縮するため、FEM解析による設計照査や極力床版端部までプレキャスト化する等の工夫をした。また、交通量の多い国道上を横過するため、主たる作業は夜間に国道を規制しながらの厳しい施工条件の下での工事であったが、大きく施工期間を短縮することに成功した。
この功績を認められて、平成25年度の土木学会東北支部、およびJCI東北支部から表彰をいただいている。
写真-9 東北道・綱木川橋