4.北海道における新技術・新材料等
4.1. 排水管の改良
寒冷地の排水管は凍結膨張、繰返し受ける凍結融解,振動作用、凍結防止剤等の劣化要因に対して適切な耐久性を有するものでなければならない。北海道支社では、一般的には亜鉛メッキや塗装した鋼管を使用しているが、凍結融解等に対する耐久性はあるものの、凍結防止剤による腐食が進んでいる(図‐8(a))。そこで、①凍結防止剤により腐食しない、②凍結時に排水管継ぎ手が破損しないという条件を基に、非鉄製の排水管や継ぎ手構造に着目し、高密度ポリエチレン管、FRP管、ステレンス管等各種材料により凍結融解試験を実施した。この結果、図-15(b)に示す電気融着継ぎ手を用いた高密度ポリエチレン管の耐久性が高いことが確認できたので、今後は、試験的に設置し、経過観察を行う予定である。排水管の耐久性が向上することで、橋梁の塩害対策に大きく寄与できると考えている。
(a)高密度ポリエチレン管を使用した事例 (b)融着継ぎ手
図-15 高密度ポリエチレン管
4.2. FRP製検査路
橋梁の長寿命化は、変状の早期発見・早期補修をすべきである。変状を早期に発見するため、検査路は安全に点検ができる状態であることばかりでなく、点検対象に対し適切に点検できる位置に設置されていることが重要である。しかしながら、図-16に示すように伸縮装置等からの漏水により検査路が腐食し穴があく等、安全に点検できない場合がある。また、桁高が高い際には、伸縮装置等を十分に点検できない状況も見受けられる。そこで北海道支社では、腐食しないFRP製の検査路の試行を行っている。更に、桁高が高く、伸縮装置等を十分に点検できない箇所には、中段検査路設置の試行も行っている。図-17にFRP製の中段検査路の写真を示す。
図-16 漏水により腐食した検査路 図-17 FRP製の中段検査路
4.3. Mproガード
劣化損傷した橋梁を発見した際に、従来であれば、落下等の危険がある部位をたたき落とし、鉄筋が露出している場合には、常温亜鉛メッキ等で防錆していたが、コンクリート剥落面は無処理であった。この後、補修するまでに数年間放置される場合もあり、更に劣化が進行してしまう可能性がある。そこで、北海道支社では、NEXCO東日本グループ会社が開発した「Mproガード」を損傷箇所に塗布する試行を実施している。Mproガードは、図-18に示すように合成樹脂塗料(無色透明)を当該箇所にスプレーで塗布することで、合成ゴム状皮膜を形成させ、水や空気を遮断する。このため、凍結防止剤等の劣化因子の更なる侵入を阻止し、劣化の進行を遅らせることが可能となる。Mproガードの大きな特徴は二液混合や刷毛塗りタイプでなく、スプレー塗布タイプで携帯が容易ということである。このため、橋梁点検時に損傷を発見した際には、携帯しているMproガードを応急的に塗布、劣化因子の侵入をその場で防止することが可能となる。また、塗布後も無色透明であることから、劣化の経過観察にも適している。
図-18 Mproガード
更に、この皮膜はある程度の強度もあり、万が一劣化が進行しても、小片であれば剥落防止となることも期待できる。