国内の道路インフラは今後急速に維持管理への対応を迫られる状況にある。特に高速道路、とりわけNEXCO3社の管理する高速道路は大型車交通台数も多く、塩害、凍害など自然条件的にも過酷な状況下にある。そうした状況にどのように対応しているのかその現状を、今月から毎月15日に東日本高速道路の本社および各支社の構造物専門役、上席構造物指導役、構造物指導役にリレー連載してもらう。今回はその初回として木水隆夫・同社建設事業本部技術・環境部構造物専門役に「高速道路における橋梁の劣化と維持管理の課題を考える」 という題で論の緒をつけてもらった。(井手迫 瑞樹)
1. はじめに
昭和38年7月16日に我が国最初の高速自動車国道として、名神高速道路(栗東~尼崎)が開通して昨年50年を迎えた。振り返ると、技術的チャレンジが、多くの研究者・技術者によって積み重ねられ、幾多の先駆的橋梁が建設されてきた1)2)。
また、50年という期間は橋梁の維持管理の歴史でもある。ちょうど東名高速道路が全通した昭和44年に当時の日本道路公団で「道路維持修繕要領(巡回編)」が整備され、以後改訂を繰り返しながら、現在では「保全点検要領 構造物編」となって点検業務の基準として使われている。
点検・診断、保全計画、補修・補強設計および工事実施のサイクルを繰り返す中で橋梁の様々な変状に直面してきた。その都度原因を推定し、適切な補修・補強工事を検討し実施する傍ら、建設時に想定し得なかった事象や、設計、材料、施工等における配慮不足なども新たな知見として積み重ねられ、国レベルの基準改訂に呼応しながら、高速道路の設計要領や施工管理要領等にフィードバックさせてきた。
鋼橋のRC床版の基準の変遷などはその一つであろう。昭和40年代に直轄国道や東名高速道路などでRC床版下面の疲労損傷が顕在化3)4)5)し、床版の研究が進むにつれ、そのメカニズムが解明されるに至った。こうした知見は設計基準への反映はもとより維持管理段階での劣化診断でも広く取り入れられるようになった6)。しかしながら昨今のRC床版の損傷を見ると、床版内部の水平ひびわれや床版上面が土砂化するなど、新たな損傷形態が増えてきている。こうした現象の進行過程については多くの研究が進められているところであるが、舗装面下で進行する損傷の早期発見手法や、耐久性の高い補修・補強工法の確立などと合わせて喫緊の課題となっている。
コンクリート橋についても、筆者が入社した頃はメンテナンスに手がかからない半永久の構造物だと認識していたが、中性化や塩害、ASR、凍害などによる変状が顕在化するのを目の当りにし、意識が変わらざるを得なかった。安全・安心で長生きする橋を目指して、調査や補修・補強技術の開発など、まだまだ取り組むべき課題は山積している。
ここで、高速道路橋に起きている代表的変状を取り上げ、これからの維持管理で取り組むべき課題について考察してみる。