道路構造物ジャーナルNET

新たに発刊した「道路橋防食便覧」のポイント

①塗装による防食技術

公益財団法人 東京都道路整備保全公社
一般財団法人 首都高速道路技術センター

髙木 千太郎

公開日:2014.09.29

塗料の組み合わせが重要
色彩設計についても配慮すべき

 次に塗料による防食法で重要な塗料の組み合わせである。採用する塗料の組み合わせが適切でないと、塗膜間の密着が不良となったり、下層塗膜が膨潤してし わになること写真等で示し、塗料選定が性能発揮に重要であることを解説した。また、塗装以外の防食法を採用した場合、具体的には、溶融亜鉛めっきや金属溶 射に塗装する場合がこれにあたるが、研磨処理やりん酸処理等の前処理について解説することで早期に変状が現れることのないように配慮した。
 次いで、塗装による防食法の大きな優位点である色彩設計である。塗装は、色彩選択の自由度が大きく、景観性の向上など様々な目的から現地の環境に適合するように色彩設計を行なうことが可能である。このようなことから、下表(色彩設計において景観と住民への配慮すべき事項)を分かりやすく示すことで架設地点周辺への影響面での配慮すべき事項を示している。

 ここでは、色彩、色彩設計、美観の保持、塗り替え時の色彩設計を示すことで長期間にわたって美しさを保つ方法を示した。設 計上の留意点としては、塗料の膜厚不足等に配慮し部材角部の面取りや素地調整作業及び塗装作業が容易に行える構造等構造細部の留意点を示した。また、製 作・施工上の留意点として、冬季の気温低下による塗装間隔が長くなるなどの施工時期、塗膜損傷の発生しやすい構造形式、塗膜損傷発生の可能性がある場合の 塗装系選定、輸送・架設対策などの検討について幅広く解説した。さらに、塗装性能に影響する罫書き、溶断・溶接部、工場塗装、摩擦接合部の処理、輸送・架 設についても詳細に解説した。新設塗装については、塗装工程を掲載するとともに、塗装性能に影響のあるブラストによる素地調整、塗料品質の確認、可使時間、粘度と希釈、塗布方法、塗り重ね間隔等について、管理方法を含めて解説した。特に、塗膜性能を十分に発揮させるためには素地調整をブラスト処理で行う ことが重要である。ブラストに使用する研削材として、金属系と非金属系があること、仕上がり面の表面粗さ、ブラスト処理後に発生する欠陥であるターニング 現象の防止方法についても示すことで、良好な塗膜形成となるように配慮した。

塗り替え塗装系選定手順を新提示
塗り替え判断が容易になるよう配慮

 塗装時に必要な塗料の使用量と施工管理法としては、従来から行っている塗膜厚の管理に加え、塗料缶(容器)による数量確認方法を具体的に示し、塗料使用量の現場管理が容易に行えるようにしている。次に、メンテナンスの重要性が求め れらている現状において、塗膜による防食法の維持管理についてである。供用開始後の塗膜劣化については、塗膜点検の基本、点検の種類や方法及び着目点を新 たに示すだけでなく、従来から使われている塗装系の損傷・劣化に加え、重防食塗装系に発生する光沢低下や白亜化などの変状写真や変状の詳細を示し、損傷・ 劣化程度の判断が誤りなく行える配慮した。塗替え塗装については、従来から示している塗替え時期に加えて、塗替え方式として、全面塗替え、部分塗替え、局部補修を解説し、塗替え塗装系選定の手順を新たに示し、塗替え時の判断が容易となるように配慮した。
 また、塗替え時に適用する塗装仕様は、Rc-1塗装系 旧塗膜に含有する鉛やPCBなどの有害物質適切な処理の必要性を明らかにするとともに、有害物質処理が行いやすい塗膜剥離剤とブラスト工法を併用すること で環境保全への寄与と良好な施工が行えるようにした。現場で行う塗替え塗装作業については、均一な塗膜形成を目標としてスプレー塗装を一般的としたが、飛散防止が必要なことを喚起するだけでなく、ボルト継ぎ手部、狭あいな部分、スプレー塗装による施工が困難な箇所等の塗装作業には、スプレーでは限界がある ことから、それを補う工法として、はけ塗りやローラ塗りが有効であるとした。以上が、「鋼道路橋防食便覧」における塗装編のポイントである。


            塗膜剥離工法例①              塗膜剥離工法例②

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