道路橋の維持補修
「水を制するー既設橋の桁端部」
(一社)日本建設機械施工協会 施工技術総合研究所
研究第二部 部長
谷倉 泉 氏
2.維持管理を考慮した設計、施工を
排水設計が維持管理コストを大きく左右する
こうして見ると我々橋梁技術者には、時代とともに少子高齢化が進む現状において、限られた予算や人的資源のもとで、いかにインフラ機能を確実かつ効率的に確保していくかということがより求められてきていると言える。実際の橋の点検報告の結果を見てみると、損傷原因が水の漏水や浸透に起因した腐食であることが最も多いことから、維持管理コスト縮減のための一つの手段として、排水、防水に配慮した橋を建設することが耐久性を高めるために効果的であると考えることができる。
新設橋と既設橋について考えてみると、新設橋については橋ごとの設計条件や架設地点の供用環境に配慮して降雨や降雪による水を橋の外に確実に排出できる構造設計を行うことや、良質な施工を行ってひび割れやジャンカ等の変状を生じないようにすることが重要であろう。特に副題ともしているように、常々どうにかならないものかと感じている桁端部に関して思いつくことを並べれば、 ・橋を傷めずに長持ちさせる上で最も重要と思われる「橋面からの円滑な排水」を促すために、流水線を考慮して、帯水しない排水性に優れた設備を適切な箇所に配置する。 ・集水枡、排水管等の排水設備は目詰まりしない径、接合構造とし、劣化しにくい材質を選定する。 ・点検員や作業員が簡便にアプローチして点検・作業出来るような空間を有する構造設計を行う。 ・初期欠陥を含め、各種変状を生じないように施工管理をしっかり行う ・傷みやすい部分には表面保護や塗装、溶射などの予防保全的な対策を講じておく ことなどが思い浮かぶ。
既設橋については、伸縮装置や支承周りの腐食およびひび割れなどの損傷事例が多くの橋で報告されていることから、桁端部の漏水を防ぐことができればかなりの維持補修費用の縮減に繋がると考えられる。仮に漏水を生じたとしても、マメな日常点検と点検時の簡易な清掃を行うだけでも支承部の腐食予防には十分効果があることも報告されている。こう考えると、橋の長寿命化は既設の構造物に限らず、新設の段階で少しの工夫を凝らしておけばそれ相当の効果が期待できるものと言える。この他、輪荷重を直接支えるRC床版の損傷事例も多く、これにも水が大きく影響することがわかっている。このようなことから、ここでは桁端部の水対策について触れることとし、床版防水については次の機会に述べたい。