オリエンタル白石と日鉄ケミカル&マテリアルが共同開発
軽く、錆びないCFRPを用いた『ExSS工法』をRC中空床版橋のせん断補強に適用
オリエンタル白石と日鉄ケミカル&マテリアルが共同開発したExSS工法(Expansion Fiber Reinforced Polymer Strand Sheet)が、NEXCO中日本の所管する東名高速道路鳶ノ子沢橋(下り線、左ルート)P2~P3間で使われている(オリエンタル白石施工)。RC中空床版橋のせん断補強材として採用されているもので、同社の炭素繊維補強シートであるストランドシート®を丸めて束ね両端部が拡底されている。これを削孔した孔に挿入した上で、注入管を結束した補強材の中に挿し込み、エポキシ樹脂を下から注入して打ち上げ、FRPとして一体化させて補強するもの。従来のせん断補強鉄筋と同等の補強効果を有しながら、より軽く、炭素繊維シートが母材のため、可搬性および現場加工性に優れるため、現場状況に対してフレキシブルに対応できる。さらに、鋼部材ではないため、水や塩分の影響を受けにくく、安定的な補強効果が期待できる。(井手迫瑞樹)
51箇所に試験施工
径も小さくできるため鉄筋に干渉しにくく、ハンドリング性にも優れる
同橋は橋長約120mのRC連続中空床版橋×7連の橋梁で、1969年に建設された。中空床版橋のせん断耐力が現基準に比べて不足している箇所があることから、主にポストヘッドバー®を挿入する形で補強された。その中で、より塩害に強く、施工性にも優れた新工法として、ExSS工法が同橋のP2~P3間の51箇所に試験施工されたもの。
削孔深さは874mm、削孔径はφ28~41mmの箇所で使用された。オリエンタル白石は同工法のメリットとして、①削孔径を本橋で基本使用しているせん断補強鉄筋に比べて細くできる。これは床版の鉄筋に干渉しにくいという点で大きい、②さらに配筋状態に合わせて現地で再加工できる(鉄筋は再製作する必要がある)ため施工手間を大きく減らすことができる、③加えて鉄筋より重量が1/5であり、ハンドリングに優れている、④本橋は床版防水についてGⅡを施し、万全を期すものの、塩分が浸透した場合、鋼材では塩害が生じる可能性がある。CFRPである本工法はその点でも腐食を起こさないために補強効果を永続的に発揮できる――とした。
ExSS工法の施工状況
施工後、上面には砕石と樹脂を混ぜたもので蓋をし、養生して完成となる(写真では一見盛り上がっているが。これは床版防水前のライナックス®などを用いた研掃により最終的に平滑化される)。
オリエンタル白石と日鉄ケミカル&マテリアルは、施工時間の更なる短縮を見据えて改良開発を継続的に行うと同時に、橋梁以外の補強分野にも積極的に提案していく方針だ。