国土交通省東北地方整備局仙台河川国道事務所が事業を所管する国道4号仙台拡幅において、国内最大級の断面交通量7~8万台を誇る箱堤交差点を跨ぐ高架橋として箱堤高架橋の建設を進めている。2日夜から3日未明にかけて、同交差点直上のP2~P3間を跨ぐ桁を一括架設した。同現場では計画段階からCIMやMR技術を活用し、詳細な検討を重ね、かつ架設時にはデジタルツイン技術を活用する等、施工の見える化を実現した。また、これらの技術により、熟練技術者でなければ把握できなかった、従来の2次元図面による施工計画や、座標等の複雑な数値管理等を視覚化し、生産性向上や合意形成の容易化を図っている。(井手迫瑞樹)
国内有数の交差点である箱堤交差点では、その広さから新幹線車両の輸送路としても使われている模様だ
同橋は橋長285m、幅員18.75mの鋼5径間連続箱桁橋(RC床版)。交差点を跨ぐP2~P3径間の長さは65mで同橋の最大支間長となっている。これを手延べ桁を使い、ダブルツインジャッキや2台の運搬台車、ベント上のエンドレスローラーを用いて架設していった。
施工に伴い国道4号は右折を規制、国道と交差する仙台市道は直進と右折を規制して左折のみとし、国道4号は右折を規制した上で22時から架設を開始し、翌4時55分ごろには手延べ桁も含めた全長100.8mの架設を完了した。
箱堤高架橋桁送出しの進捗状況
同橋は、国内有数の交通量を誇る交差点上を跨ぐ高架橋であることから、架設前から様々な配慮を行うためMR(複合現実)を活用している。例えば塗装色は実際の交差点にMRを活用してシミュレーションを行い青、緑、グレーの3色を比較して青を選択した。また、地域住民への説明などに活用すると共に、実際の架設シミュレーションに用いて道路俯角や機材配置の検証も4次元的に行うことが出来た。
MRを用いている
架設においてはデジタルツインによる送出し架設を行った。同架設は最初は2台の運搬台車を用いて送り出すが、送り出しが進むにしたがって、支点とする設備も、支点にかかる反力も大きく変わってくる。それをリアルタイムに管理し、かつ分かりやすく管理するため、事前にシミュレーションした施工管理として経過時間ごとの進捗状況や現場の送り出し状況、送り出し移動量、通りのずれ、たわみ、ジャッキ反力の理想的な状況を4Dモデルとして構築した。
事前シミュレーションと実際の3Dモデルとリアルタイム計測を実施し、両者を比較しながら施工している状況
実際の架設では、この4Dモデルによるシミュレーションを理想値として施工を進める。手延べ桁の先端、本桁と起終点に3か所にGNSSを設置して桁位置(通り、たわみ)を計測し、またジャッキ反力をデータを収集して、それをクラウドを通して3Dモデルに付与して施工管理を行い、事前のシミュレーションとの誤差を補いつつ施工を進めていった。
リアルタイムかつ視覚的に分かりやすく情報を得られるため、管理は非常にし易くなっている。現在は試行段階だが、将来的には施工補助を行う熟練技術者が現場ではなく、オフィスで状況を見ながら指示を的確に出すという事も行うことが出来そうだ。
21日夜には0.3mのジャッキダウンを行い、P2~P3間の架設を完了する。残る径間は全てクレーン+ベント架設で行う予定だ。
上部工架設製作の元請は高田機工。一次下請は相馬建鐵(架設)、オックスジャッキ(ジャッキ)、ミツヤ(塗装)。
(※2月末ないし3月上旬に『現場を巡る』において詳細記事を掲載予定です)