阪神高速道路は、大規模更新事業として神戸線湊川付近の鋼床版対策と耐震対策を兼ねた新設橋脚の増設を進めている。橋脚は全部で7基増設する予定で、8月20日の深夜から21日の未明にかけて国道2号線の一部を夜間全面通行止めして、クレーンの相吊りによる橋脚梁部の架設を行った。(井手迫瑞樹)
国道2号線を夜間全面通行止めして施工(井手迫瑞樹撮影、以下注釈なきは同)
大規模更新対象となる高架延長は約400m
新設P3の梁延長は27.1mに達する
湊川付近の大規模更新対象となる高架延長は約400m。供用年次は1968年で、鋼道路橋設計示方書(昭和31年)に基づいて建設している。本橋は国道交差点(東尻池)や運河渡河など制約条件が多く、支間長が長くなることに加え、国道2号の限られた道路敷地内にコンパクトな構造の基礎建設を余儀なくされた。上部工の死荷重軽減を図るため、箱桁が扁平となり、交通荷重の増加もあって床版および桁に疲労亀裂が数多く発生し、さらには兵庫県南部地震で変形などの被災を受け、補修して再利用したことも亀裂の要因となっており、上部構造の抜本的な対策が必要となっている。
最終的には桁の架替えを行うが、現在の橋脚は架替えすると基礎が持たないため、先に橋脚を増設する必要があり、その工事を進めているもの。増設する橋脚は7基あり、形式は通常の鋼製橋脚4基(新設上りP1およびP2、同下りP1、P2)、張出しの長いT型橋脚3基(新設P3、新設P4、新設P6)は基部がRC構造で、基部の上端と梁の部分が鋼製の複合橋脚とした。ピア高は高く、下りP1は15.45mに達する。同高架橋の構造は上下線に分かれており上下線の桁間の間隔が大きいP1、P2は上下線に橋脚を1本ずつ立て、間隔が比較的小さいP3以降は1本柱で梁を張出す形式とした。現在、上下線とも新設P1の施工は完了し、その他の橋脚もあらかた基礎工は完了している。橋脚基礎はいずれもケーソン構造で、施工方法としては、狭小箇所でも施工可能なアーバンリング工法を採用している。
中間橋脚の設置予定図(阪神高速道路提供)
今回施工した新設P3は柱部RC、梁部鋼の複合構造である。構造はケーソン天端から6.4m部分がRC構造、その上部から3.5mを鋼殻との複合構造とした。梁部は鋼構造である。新設P3は一本柱の橋脚の中でも上下線の桁間の間隔が大きく、梁長は27.1mに達する。そのため柱部の複合構造部(高さ3.5m)と梁部の根元部分(高さ2m×長さ6.5m)は4ブロックに分けてヤード内で溶接して一体化し、7月下旬に360tオールテレーンクレーン1台を用いて架設した。部材重量は64t。
両側の梁架設前の状況
65t吊ラフタークレーンを2台ずつ配置し、相吊り施工
端部に仮設梁を設置して吊り点を確保
8月20日深夜から21日未明にかけて国道2号線の一部を夜間全面通行止めして行ったのが、新設P3梁部の施工である。梁の高さは2m、長さは上り線側が10.15m(25.2t)、下り線側が10.4m(25.4t)、幅はいずれも2.5mとなっている。両側の梁共に多軸移動台車(上組)で施工する箇所近傍まで運んだ。上に供用線の桁があり、吊り点を中心に取れないことから上下線とも両側に65t吊ラフタークレーンを2台ずつ配置し、相吊り施工した。施工にあたっては、吊り点を確保する観点から両側の梁とも端部に仮設梁を付けていた。
多軸移動台車で梁を所定の位置まで運び
相吊りに用いる65tラフタークレーンを配置
施工は夜11時ごろから本格的に開始し、1時半ごろには所定の高さまで吊り上げ、3時ごろには仮留めが完了した。
梁を吊り上げた
吊り上げ完了後は仮設梁を溶断した/仮設梁溶断および仮留め完了状況(右写真のみ阪神高速道路提供)
その後、仮設梁を溶断し、午前5時に交通開放した。
仮留め箇所は、後日全断面溶接する。
元請は森組・エム・エム ブリッジJV。一次下請は植田建設工業(架設)、澤田運輸建設(クレーン)。
(9月末に『現場を巡る』で詳細版を掲載します)