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自走式門型床版架設機『ハイウェイストライダー』を使用

NEXCO中日本東京支社 東名多摩川橋の大規模更新現場を公開

公開日:2022.06.01

 NEXCO中日本東京支社は、大規模更新工事の一環として、東名多摩川橋の床版取替工事を行っており、その現場を公開した。同橋は床版全幅員31mを5分割して施工する手法を取っており、上下3車線を極力確保して交通への影響を最小限にしていることが特徴だ。そうした施工計画を実現するため、様々な新技術・新材料を採用している。(井手迫瑞樹)


東名多摩川橋、4機のハイウェイストライダーを使っている(井手迫瑞樹撮影)

 同橋は1日約10万台の交通量を誇る重交通路線であり、担当するnexco中日本事務所管内の東名では大型車混入率は30%に達している。1968年4月の供用以来、50余年が経過し、その間床版防水や床版上面の断面修復・下面の鋼板接着など様々な補修補強を行ってきたが、床版下面のコンクリートの浮き・剥落、鉄筋露出、鋼板接着部のコンクリート損傷、伸縮装置近傍の劣化、地覆外側のコンクリート剥落などが生じていることから、今回、床版を取り替えるに至った。
 同橋は上下線とも橋長495m、幅員31.3m(有効幅員14.05m×2)の鋼3径間連続合成鈑桁×3連という構造である。設計示方書は昭和39年道路橋示方書で、既設床版厚は200mmである。上下線の地覆端部同士のクリアランスは実に20mmしかないものの、上下線の桁はセパレートになっていることから、まず上下線間に対傾構を設置し、その上にさらに縦桁を設置することで本来、車が走行しない部分を補強した。その後、2021年12月から上り線の張り出し床版部、次いで、上り線の中間床版、中央分離帯も含めた中央部の床版、下り線の中間床版、下り線の張り出し床版という順番に5STEPに分けて床版を取り替えていく(右図参照、NEXCO中日本提供、以下注釈なきは同)

 桁が活荷重合成桁であることや、きわめて限られた規制幅内で施工する必要があるため、床版取替の現場で通常用いる大型クレーンは使えない。その代わりとして、先行の中央道弓振川橋や東名阪道弥富高架橋などでも使っている自走式門型床版架設機『ハイウェイストライダー』を改良して使用している。


ハイウェイストライダー(井手迫瑞樹撮影)

 また床版と桁との切断は『サブマリンスライサー』、桁上面の錆除去は『フランジブラスター』、床版間詰には同工事元請の大林組が開発し、中央道などの現場で施工実績のあるスリムクリート(UFC)を使用したスリムファスナー工法を採用している。加えて、床版中央部(中央分離帯左右部)の施工においては昼夜で規制幅が異なるため、一部で間詰コンクリートの施工と走行部分がラップする箇所がある。そのため、間詰部にUFC製の埋設版『スリムNEOプレート』を設置して、その上に舗装をかけておくことで、車両の走行に影響を与えないようにして交通開放する計画である。同部分の間詰材は桁下から注入し、埋設版と一体化させ、完成構造とする。


サブマリンスライサーとフランジブラスター

 ハイウェイストライダーは1回の移動ごとに3枚の床版の撤去・架設を行うことが出来るように設計されている。多摩川橋では同機を4台運用しており、最大で1日12枚の取替が可能だ。同機は1度組み立てればそのまま自走できるため、盛り替えに大きな時間を要しない。またクレーンは縦横の移動および吊り設備の上げ下げが電動で行えるほか、吊り設備の根元に円形フレームを用いて多点吊り下げ構造としているため、床版の回転も含めてすべての作業を介錯なしで行うことが出来る。


ハイウェイストライダーを使った床版の撤去(左、井手迫瑞樹撮影)および架設状況(右)

 本現場は5断面分割施工のため、縦継ぎ目が4ラインに発生するが、その継手部すべてをスリムファスナー構造としている。下り線および上り線の中間床版取替時は、昼間と夜間で規制幅が異なり、従来手法では間詰材の打設後、固まるまでの養生時間を確保できないことから、交通への影響を防ぐため、同個所には、UFCの埋設版スリムNEOプレートを設置した。


スリムファスナーの継手部(井手迫瑞樹撮影)およびスリムクリートの施工状況

 床版防水も同等の性能を有するUFCを表面に採用することで、地覆との境界部及びジョイント近傍を除いては不要とし、両端部の壁高欄もわずかな現場打ち部以外は全てEMC壁高欄を用いるなど、施工時間の短縮、ライフサイクルコストの縮減に努めている。


EMC壁高欄(井手迫瑞樹撮影)

 設計及び製作・施工の元請は大林組。大林道路JV。

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