東京で記者説明会を開催
NEXCO西日本 ミッシングリンクの解消、4車線化事業、予防保全が3つの柱
西日本高速道路(NEXCO西日本)は1日、東京・霞が関ビルで、同社の災害対応と事業の重要な取り組みについての記者説明会を開催した。酒井和広社長(右肩写真)は、注目の4車線化事業について、「対面通行区間約580kmのうち、約380kmが優先整備区間として位置づけられている。従来の付加車線事業に加えて、4車線化事業を積極的に進めていきたい」と語った。同社はミッシングリンク解消や4車線化の促進を図るべく、この4月には奈良と佐世保に工事事務所を新設している。また、初めて再有料化した八木山バイパス(福岡県)についても、国土交通省と共に4車線化事業を進めていく。
災害対応では、台風19号などで被災された方々にお見舞いを述べた後、「西日本地区では今年も7~9月にかけて何箇所かで大きな災害が起こり、管理する高速道路では九州、中国地区で土石流などによる被害が発生した。平成30年7月豪雨による災害はすべて対策が完了しているが、過去に経験したことがないような災害が発生する可能性が非常に高くなっている。そのような災害に対する対応力を、関係機関と協力しながらグループの総力を結集して磨いていきたい」とした。 高速道路事業に関する重要な取り組みについては、①ミッシングリンクを解消するための建設事業、②暫定2車線区間の4車線化事業、③予防保全の徹底――の3点をあげた。 ミッシングリンクの解消については、「(同社の)営業延長は3,533kmで、ミッシングリンクの71kmで建設を進めている。71kmは全体の2%となる。高速道路はつながって初めて大きな効果を発揮するので、その2%の建設は事業整備効果が高い区間だと考えている」と語った。 4車線化事業では、国土交通省から9月に公表された『高速道路における安全・安心基本計画』で暫定2車線区間の解消が重要施策としてあげられ、「(同社の)対面通行区間約580kmのうち、約380kmが優先整備区間として位置づけられている」と説明。「災害対応力では暫定2車線区間と4車線以上の区間では雲泥の差があるとともに、(4車線化で)正面衝突事故や工事などによる通行止めを回避できる。その意味で、ネットワークの安定性と強靭化に資する事業となる。従来から行なっている付加車線事業に加えて、4車線化事業を積極的に進めていきたい」と語った。 予防保全では、「リニューアルプロジェクト、さらなる構造物の耐震補強を進めるとともに、点検結果で損傷があるところを修繕するということではなく、今後損傷が発生するであろう箇所を積極的に修繕あるいは更新していく予防保全に力を入れていきたい。事後保全と比較して予防保全では、コストが半分になるという試算もある」という考えを示した。 その後、芝村善治取締役専務執行役員から災害関連に加え、新規追加事業、新名神高速道路(大津~神戸)の整備状況などについての説明が行われた。2019年3月新規追加事業では、新名神高速道路(甲賀土山IC~大津JCT、延長約28km)の6車線化、広島呉道路(坂北IC~呉IC、延長約12km)の4車線化、一般国道201号八木山バイパス(篠栗IC~穂波東IC、延長約13km)の再有料化による4車線化などがある。
2019年3月新規追加事業のうち、4車線化および6車線化の概要(NEXCO西日本提供)
質疑応答では本NET記者から、①点検の結果、大規模更新の当初計画以外で損傷が激しく大規模更新に加えないとならないものが出てきている。NEXCO西日本ではそのようなものはあるか、②大規模災害での土砂崩落などに対して、ハード面でどのような補強を考えているか、③4車線化事業などにともない、工事事務所の新設や建設事業本部の体制見直しは考えているか――の3つの質問がなされ、芝村氏が回答した。 ①については、「当初計画を作成したときは5年に一度の詳細点検を反映していなかった。5年の成果を踏まえてすでに対策を進めている箇所もある。その他については見直しを進めている」とし、大規模更新の数量が増勢傾向にあることを示唆した。 ②では、「のり面については、大規模更新のなかで計画として取り組むことになっている。最近の災害では、区域外から予想外の大きな土石流などが起きており、その対処が大きな課題となっている。自治体等と情報交換をより密にして、取り組んでいく必要がある」と述べた。 ③では、「現在は管理主体の事務所体制となっているが、民営化以降初めて新設事業対応の事務所として奈良工事事務所と佐世保工事事務所を今年、開設した。今後、このようなこともあるかもしれないが、基本的には高速道路を管理している事務所の中で、個別の体制を組んで取り組んでいく」と回答した。
(2019年11月5日掲載)
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