「全周囲道路映像」で現地調査の削減や現地対応を迅速化
NEXCO東日本 スマートメンテナンスハイウェイの取り組みを説明
東日本高速道路(小畠徹社長、(右肩写真))は27日、本社で定例記者会見を開催し、スマートメンテナンスハイウェイ(SMH)の取り組みについて説明を行った。
「高速道路の老朽化と生産年齢人口の減少が進行するなかで生産性の向上が喫緊の課題」(小畠社長)となっているなかで、SMHはICTやロボティクスなどの最新技術の活用により維持管理業務プロセスの変革を目指すプロジェクト。2020年度からの同社全体での本格展開に向け、現在、札幌、盛岡、郡山、三郷、佐久、湯沢のSMHモデル事務所で開発技術を試行検証している。
点検・調査では、モバイルPC端末を現場に導入することにより、点検記録入力からデータ登録までの作業時間を削減して、効率化を図る。分析・評価のプロセスでは、多種多様なインフラ管理データを統合し、必要なデータを検索、集計する次世代RIMS(道路保全情報システム)の構築・運営を行う。次世代RIMSはほかのシステム、技術とも連動するSMHの中核となる。
会見ではふたつの新たな開発技術が紹介された。「全周囲道路映像」は高速道路を360度カメラで撮影し、その映像に空間位置座標値を持たせることで、現地に行かなくても構造物の有無、周辺状況の確認、大きさの確認などが可能になる。モデル配置機能では、標識板やロードコーンなどの3Dモデルを3次元映像内に配置することで、規制時のシミュレーションを行える。モデル事務所の札幌管理事務所では北海道胆振東部地震時の規制にあたり本機能を活用したという。また、構造物の情報や点検結果、工事実施結果などの道路管理情報を画像内に表示する機能も開発中となっている。
MR(複合現実)技術を活用した技術者育成ツール「PRETES-e」は、橋梁の内部構造(基礎や鉄筋・PCケーブルなど)を可視化することで、構造の基本的な考え方や設計・施工上の特性を学ぶことができ、効果的な研修が可能となる。今後は、点検や配筋検査などの施工時にも活用していきたいとしている。
全周囲道路映像
PRETES-e
次世代RIMSの基幹技術は、内閣府が進める戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)にて共同研究で開発されていることから、開発成果を他のインフラ管理者にも広く展開していく。現在は「橋梁メンテナス統合データベースシステム」として山形県、宮城県、仙台市で運用されている。さらに、オープンイノベーションによる発展を目指すとともに、成果を広く活用することを目的とするコンソーシアムを、今年度内を目標に設立すると発表した。
(2018年11月28日掲載)