「TN-Monitor」 福岡市営地下鉄七隈線博多駅に初適用
大成建設 トンネル先行変位計測システムを開発
大成建設は、都市部のトンネル工事において山岳トンネル工法(NATM)を用いて施工する際、切羽前方の微細な地盤変形をトンネル坑内から詳細に計測できる、トンネル先行変位計測システム『TN-Monitor(Taisei NATM Monitor)』を開発し、福岡市地下鉄の七隈線博多駅(仮称)工事に初適用した。
同システム(左図は構造概要)は、トンネル坑内から切羽前方の約20㍍前方に、地盤の上下方向の変形量から沈下分布状況を計測する「SAA」(地盤の微細な変状を精度よく測定できる加速度センサーを搭載した傾斜計を数珠つなぎにして3次元の変位を計測する地中変位計)、トンネル前方からトンネル内に押し出してくる地盤の動きを捉える「T-REX」(リング状の磁性体の位置変化を受信素子で計測してトンネル切羽先行部の奥行方向変位分布を評価する地中(押出し量)変位計で、磁性体間の変位増分を計測する装置)の2種類の計測機器を設置するもの。これらの計測機器から取得したデータにより、トンネルを掘進する際の前方の地盤の様子を詳細に把握することができる。
(左図)SAA/(右図)T-REX
これにより、近接するインフラ施設への影響の程度や、断層などの不良地盤の位置や規模の把握、トンネル切羽前方の地盤の硬さを評価し切羽の崩壊を防ぐための適切な補強や使用を決定できる。また、同装置をトンネルの掘削方向とほぼ平行に設置することで、トンネル全線にわたって計測することができ、掘削の影響が及ばない約20㍍前方の位置まで設置し、地盤の変位を詳細に捉えることができるため、必要に応じて地盤の先行補強を行うことができる、などのメリットを有する。加えて、取得した沈下、変位分布データは直ちに整理され、トンネル現場に設置された表示装置で常に確認することができるため、技術者、現場作業員間で施工情報を共有できる。
都市部でのトンネル工事では、トンネルの掘削進路周辺に地中インフラ構造物が存在することが多く、これらに対する掘削の影響を常時監視し、大きな変状が生じる前に適切な対策を講じていく必要があります。しかし実際には、地上のビルや道路、建築物基礎等がボーリング調査を阻害するため、常時監視することが困難であるという課題があった。
同社では今後、既存のオフィスビルや住宅、道路や地中の上下水道配管などのインフラ施設への影響が懸念されるトンネル工事などの土木工事において、地盤内に存在する断層などの位置や規模を正確に把握するために、同システムの適用を進めていく方針だ。