保全のビジネスモデル構築を
15年度鋼橋需要は全体で26万㌧
14年度は22万4000㌧と前年度比14.9%減、25万㌧割れとなった鋼道路橋。15年度の鋼橋事業は上期の時点で、首都高速道路の大規模更新事業などが寄与して、前年度同期比15.0%増の11万400㌧。下期も大規模更新が期待できることから、鉄道橋などの民間を含めた鋼橋需要は26万㌧まで回復すると見込む。海外では、政府が質の高いインフラ輸出の促進を積極的に開始、アジアを中心に鋼橋関連のODA案件が出件しつつある。大規模更新事業や点検・維持管理などの維持・更新市場は首都高羽田線を皮切りに始動。鋼橋業界の16年度を展望する。
15年度は、大規模更新事業が寄与して26万㌧まで回復すると見込む。鋼橋発注量が8年前に比べて半減以下になっていることは紛れもない事実で、業者がそれほど減少していない中、受注競争の激化は変わらない。
海外事業では、政府が質の高い道路や鋼橋技術をはじめとするインフラ輸出の促進を積極的な展開を開始した。国交省の15年度補正予算でも、インフラシステムの輸出促進として、効果的なプロモーション用動画などの広報コンテンツを作成する戦略的広報のために1億800万円を充当するなど本腰を入れる構えだ。さらに今月、トルコで日本・トルコ橋梁技術セミナーが開催される。両国関係者が長大橋技術に関して発表するもので、日本からは国土交通省をはじめ、橋建協、海外交通・都市開発事業支援機構などが発表する予定。道路・橋梁分野における日本・トルコ間の官民での相互の理解・協力の深化を図るよい機会といえる。
昨年では円借款事業によるインドのデリー~ムンバイ間貨物専用鉄道西線、バングラデシュでの橋梁建設・改修工事、インドの高速鉄道システム事業など西南アジアを中心に出件し、日本企業が受注している。
首都高1号羽田線を皮切りに動き出した大規模更新事業は、東・中・西日本の高速道路会社3社の事業費が約3兆円。このため、維持管理・保全市場に参入する企業が増加しつつある。ファブにとっては売上面で貢献するが、製作物が少なく工場稼働率には寄与しないという装置産業の構造的な課題を抱えている。工場の統廃合、生産体制の効率化や、グループ内での効率的な生産体制の再構築を図っており、生産コストの削減と需給のアンバランスを解消する動きが活発化している。既存の事業展開ではない、新たなビジネスモデルを構築できるかがカギとなるであろう。
一方、昨年10月に横河ブリッジと横河工事が合併して新生・横河ブリッジが始動。東京鐵骨橋梁と片山ストラテックが経営統合に合意、11月までには新会社として出発することが発表された。これまでとは違い、株主や売上高経常利益率の重視の面から事業の選択が求められつつある。利益の出るものにポートフォリオをおくことは当然で、加速化していくであろう。「選択と集中」による企業の経営資源の効率的活用を図るとともに、10年、20年先を見据えた新たな企業統合などを考える時代が到来したといえる。
地方でも熊本県が発注している新天門橋(仮称、橋長463㍍、ソリッドリブ中路式鋼PC複合アーチ橋、下記写真)が上部工架設に入るなど、明るい兆しが見えつつある。
ついに鋼桁の架設が始まった新天門橋(熊本県発注、横河・日本ピーエス・吉田・吉永建設JV)