実証実験で耐震性能を確認 従来比で工期を半減、コストを2割縮減
JFEシビルが橋脚ダンパー工法を早大と共同開発
JFEシビル(本社・東京都台東区、藤井義英社長)は、早稲田大学と共同で二重鋼管ブレースを用いたRC橋脚の耐震補強工法「橋脚ダンパー工法」の開発を進めている。在来工法と比べて工期を半減、コストを2割程度縮減できるという。このほど、昨秋に次ぐ2回目の実証実験をJFEスチール東日本製鉄所・京浜地区の鋼構造試験棟で実施中。商品化に向けて年度内にも実験で得られたデータを取りまとめ、4月から設計コンサルなどへの提案営業を開始する考えだ。
5分の1の橋脚模型を使った正負交番載荷実験
同工法は、JFEシビルの鉄骨造建築向け耐震・制振デバイス「二重鋼管座屈補剛ブレース(ピン接合タイプ)」を橋梁向けに応用したもの。同製品を脚柱とフーチングにアンカーボルトで固定することにより地震時に作用する曲げモーメントに対する補強効果を発揮し、RC橋脚の耐震性能を向上させる。
二重鋼管ブレースがダンパーの役割を担い、地震時の橋脚の変形に伴って伸縮することで地震エネルギーを吸収し、橋脚の変位や損傷を軽減。橋脚本体の保有水平耐力が低下した後もダンパーが支持力を発揮し、橋脚の倒壊を抑止する。橋脚外周に部分的に補強材を設置するため、RCや鋼板の巻き立てが困難な場合にも適用でき、地震後にRC柱脚とダンパーの損傷状態の点検や復旧が容易だ。
橋脚の曲げ補強方法には、外周にアンカー筋を設置する工法などがあるが、変形性能を確保するとともに水平耐荷力の上昇を伴い、大きな負荷がかかる基礎部の補強が必要になる場合もある。一方、橋脚ダンパー工法は、ダンパーの履歴曲線が菱形に近い形状となり、エネルギー吸収量が大きい。このため、橋脚の耐荷力の増加を少なくし、基礎への荷重増を抑制して基礎の補強を回避、低減できるといったメリットもある。
橋脚ダンパー工法の主要部材である二重鋼管座屈補剛ブレースは、鉄骨造建築向けの制震・耐震補強部材として新設・既設物件に多数採用され、1994年の発売以来、2,000件以上の実績がある。また、土木分野でも橋梁の上部構造の耐震補強にも使われている。
JFEシビルは土木向けでの適用拡大を図り、コンクリート構造学を専門とする早稲田大学の秋山充良教授と共同で1年前から橋脚耐震補強工法の開発に着手した。現在、制震ダンパーを取り付けた5分の1の橋脚模型を使った正負交番載荷実験を行っている。実験では、橋梁の上部構造に相当する一定軸力と地震荷重に相当する水平力を繰り返し載荷した時の変形性能などを検証。今年度中に実験結果を取りまとめた後、早ければ4月にも設計コンサルタントや施主に向けて提案活動を始める。