大規模更新・大規模修繕に期待
鋼道路橋は今年度、来年度とも横ばいで推移
二極化が顕著に
13年度は26万3,000㌧と前年度比で若干の増加となった鋼道路橋。14年度は、第1四半期では13年度補正予算や公共事業の早期発注により、同31・3%増の4万2,000㌧で推移したが、第2四半期では発注減少や下部工の工程遅れなどから同40・2%減の4万9,000㌧。第3四半期では堅調に回復していることから横ばいの27万㌧と予測する。15年度は、震災復興関連が発注されるが、目立つ大型プロジェクトがないため、横ばいの27万㌧前後と見込む。
低迷が続く環境で日本橋梁建設協会は、重点項目の1つ「鋼橋の魅力の浸透」として、PRパンフレット「鋼橋の魅力」と「平成26年度版 鋼道路橋の工事費実績」を作成。10年ぶりに地方整備局との意見交換会を実施するなど『鋼橋のファン』を掘り起こす活動を積極的に展開している。
海外事業に関しては、政府のODA案件を中心に堅実に、収益よりも長大橋技術の維持・伝承などに重きを置く企業と、国際入札案件への積極的な応札や合弁会社設立など新基軸構築に向かうファブとに二極化が顕著になってきた。
首都高1号羽田線をはじめとする大規模更新事業の維持・更新市場は、有望な市場として注力するファブが多いが、製作物が少なく工場稼働率には寄与しない装置産業としての構造的な課題をかかえている。ファブ各社では生産体制の集約化や、グループ内での効率的な生産体制の再構築を図る動きがみられる。
新設橋では大型工事が減少する中、大規模更新事業や点検・維持管理などで脚光を浴びる維持・更新市場は、首都高で羽田線を皮切りに大規模更新事業が始動、有望な市場として注力するファブが増えつつある。鋼橋業界の15年度を展望する。
国道298号線を大型多軸台車で夜間一括架設した「東京外環 高谷ジャンクションAランプ橋」
(写真提供・横河ブリッジ)
震災復興関連が本格化
15年度は、圏央道関連がほほ終息するが、三陸沿岸道など震災復興関連が本格化してくる。ただ、鋼橋発注量が7年前に比べて半減していることは事実で、業者数がそれほど減少していない中、受注競争の激化は免れない。ここ数年、特定業者4~5社に受注が偏重する傾向が顕著になりつつある。
昨年、公共工事の品質確保の促進に関する法律の一部を改正する法律案、改正建設業法、改正公共工事入札契約適正化法が施行された。これらの法案では受注者が適正な利潤を確保できるようにすることなどを発注者の責務と規定。事業に応じた詳細設計付工事発注や設計・施工一括発注などの多様な入札契約制度の導入、ダンピング防止などが示されている。新入札方式での試行が開始、適正な価格での入札が期待される。
維持保全市場へ予算がシフト
高度成長期に集中的に整備された国内のインフラ構造物、とりわけ橋長15㍍以上の道路橋は約16万橋(橋長2㍍以上は約70万橋)と膨大なストックが存在する。昨年、5年に1度の点検を実施するなどの道路管理者の義務を明確化する「道路法施行規則の一部を改正する省令」が施行された。なかでも、約50万橋を管理する市町村は、財政、人員、技術面での課題を抱えている。国交省では財政面の支援をはじめ、人材、技術面での後押しを開始。民間の関連資格取得者による活用も視野に入れており、注目度が高くなりつつある。首都高1号羽田線をはじめとする大規模更新事業が始動、維持・保全市場への予算シフトが加速化するであろう。
海外事業はJFEエンジが健闘
横河、宮地が動く
一方、海外事業は、東南アジアやアフリカでのODA案件を中心に堅実な受注をめざす企業と、国内需要の減少を見据え、新基軸構築に向けた大型国際入札案件への応札や現地での合弁会社設立など向かうファブとに二極化。なかでも、JFEエンジニアリングがミャンマーに設立した合弁会社は創業2年目で、生産量を倍増する設備投資を実施するほど受注している。
縮小する新設需要、本格化する維持・更新事業や海外事業と多角化する市場では、総合力の高い企業が存続しやすい。その中、宮地エンジニアリンググループが三菱重工鉄構エンジニアリングを子会社化、横河ブリッジと横河工事の合併が発表された。「選択と集中」による企業の経営資源の効率的活用を図る時代が到来したといえる。
(鋼構造ジャーナル2015年1月5日1、2面より抜粋)