国土交通省東北地方整備局福島河川国道事務所は福島県県北地域の東北中央自動車道、国道4号、国道13号及び国道115号の道路改築や維持管理を行っている。11月4日には 福島大笹生IC~米沢北間が開通し、福島県北地域の東西を結ぶ新たな「万世大路」というべき高速道路網が確立された。一方で、相馬福島道路も霊山~福島間で、新幹線や東北本線を跨ぐ桑折高架橋などの建設が進んでいる。桑折高架橋では、コンクリートの品質管理を重視し、橋脚および上部工の建設がなされている。管内道路の保全の話題も含めて石井宏明所長に詳細を聞いた(取材は8月及び9月に実施)。(井手迫瑞樹)
管理延長は福島県北地域の約94km
新たな万世大路、東北中央道の建設進む
――事務所が所管する道路事業から
石井 道路事業では、福島県県北地域の東北中央自動車道、国道4号、国道13号及び国道115号の道路改築や維持管理を行っており、現在の管理延長は約94kmとなっています。
――地勢的特長は
石井 福島県県北地域には4市3町1村あり、約50万人の方々が在住しています。8市町村のなかで、福島市の占める割合が大きく、人口の約6割、面積の約4割を占めています。また、県北地域は、宮城・山形両県と接する地域であり、エリア内の中心地域を南北に縦断する形で阿武隈川が流れ、その流域に福島盆地が広がっています。西側には磐梯朝日国立公園の一角を占める吾妻・安達太良連峰が連なる奥羽山脈、反対の東側にはなだらかな阿武隈高地が続いています。一方、道路の管理は、南北軸の国道4号、福島から山形県につながる国道13号、東北中央道の一部、合計94.4kmを所管しています。
地形的には、主要地域は福島市になりますが、福島市街地は盆地の形状をしていますので、どの方角に行くにしても山を越えることになり、地形的な厳しさがあります。国道4号でいえば、東京方面から福島市街地に入ってくる伏拝交差点部が勾配5%で、一番縦断勾配がきつい箇所となっています。NEXCOの東北縦貫道では、東京からの最初のトンネルが福島トンネルで、地形的に山がちなところで、南北ラインの難所になっています。そうした高低差による渋滞や安全性を高めるための事業として国道13号福島西道路というバイパス事業も進めています。
あとは、他の事務所も一緒だと思いますが、老朽化に対するメンテナンスの課題もあり、管内の橋梁、トンネルが老朽化してきていることから、それらに対応しているところです。福島県のメンテナンス会議も行っていますが、義務化後3年間点検を行ってきて、6割の点検が完了し、今後は第2ステージということで、どのように補修していくかというところです。福島も古い橋梁、トンネルがあり、建設後50年を経過した構造物をどう補修していくかということも大きな課題になっています。
現在の国道13号が開通してから去年で50年になりました。その中には東栗子トンネル、西栗子トンネルという大きなトンネルがありますが、こちらも建設後50年以上が経過しています。
国道13号の別名を「万世大路」と言っています。初代は明治14年、2代目は昭和12年に完成しており、いまある現道が第3世代となりますが、昭和30年代の高度経済成長期のモータリゼーションに対応して冬場も通行できる道路ということで、当時、「栗子ハイウェイ」と呼んでいました。昭和41年に完成して、昨年ちょうど50年を迎えましたが、今年度は高速道路として東北中央自動車道が新たに開通する予定です(11月4日に、福島大笹生IC~米沢北IC間が開通)。初代から数えると第4世代となります。
トンネルの延長も技術の進歩とともにどんどん伸びて、延長が伸びると標高の低いところに道路ができることから、雪の影響も受けにくくなっています。東北中央道の栗子トンネルの延長は8,972mで、全国でも5位の長さとなり、国交省管理のものとしては最長となります。
――道路網の現状は
石井 阿武隈川に並行して南北に走る国道4号、同じく都市圏の西側を南北に走る東北縦貫道。また、吾妻連峰を超え山形県に至る国道13号。これらが主要な幹線道路となっております。しかし、河川や山地といった、地形的な制約などもあることから、環状機能や放射機能が十分に発揮できておらず、都市圏内では朝夕を中心とした渋滞も問題になっています。
桑折高架橋建設は高度な技術力必要
――主要な事業と課題を相馬福島道路事業から
石井 主要事業として、復興支援道路の相馬福島道路を震災復興のリーディングプロジェクトとして事業を進めており、早期開通を目指しています。被災地と県の中心部を結ぶ復興支援ですが、高速道路網でいえば新しい東西軸(常磐自動車道と東北縦貫道を連結)ができることで、復興支援のみではなく、地域の活性化につながるものとして、非常に期待は大きいものがあると思います。総事業は約1,980億円となっています。
延長は相馬IC~(仮称)福島北JCT間45.9kmで、相馬玉野ICを境にして西側29.2kmは当事務所、東側の阿武隈東道路と相馬西道路の16.7kmを磐城国道事務所が担当しています。事業区間にはインターチェンジを6箇所〔相馬山上IC、相馬玉野IC、(仮称)阿武隈IC、(仮称)霊山IC、(仮称)福島保原線IC、(仮称)国道4号IC〕建設します。
事業区間は5工区に分かれていますが、今年3月には磐城国道事務所が担当する阿武隈東道路10.7kmが開通しました。
当事務所が担当する29.2kmの進捗状況は、平成28年度末時点で全体で約7割となっており、個別の進捗率は、阿武隈東~阿武隈〔相馬玉野IC~(仮称)阿武隈IC間5km〕約70%、霊山道路〔(仮称)阿武隈IC~(仮称)霊山IC間12km〕約85%、霊山~福島〔(仮称)霊山IC~(仮称)福島北JCT間12.2km〕約29%となっています。霊山~福島間のうち、(仮称)福島保原線IC~(仮称)国道4号IC間2.8kmについては、一部用地協議中のところがありますが、平成32年度を目途に事業を進めています。
霊山~福島間地図(福島河川国道事務所提供、以下注釈なきは同)
特徴としてはルートが峠を越えるかたちとなりますので、全体のうちの約4割をトンネル(17本、うち福島分は11本)、橋梁(36橋、同25橋)という構造物が占めます。今年度は相馬玉野IC~(仮称)阿武隈IC間にある彦平橋(43.7m、PC単純ポステンコンポ桁)が完成しますが、福島管内ではまだ12橋の橋梁が建設中または未着手です。
今後は、霊山~福島間を平成32年度の供用に向けてどのように進めていくかが大きな課題です。特に桑折高架橋の東北新幹線および東北本線を跨ぐ部分の架設は高度な技術力が要求されます。
桑折高架橋跨線橋部は高度な技術力が要求される(上:福島河川国道事務所提供、下:井手迫瑞樹撮影)
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