道路構造物ジャーナルNET

道路・橋梁の被害額は約150億円

北海道 台風10号からの復興

北海道 建設部土木局
道路課長

宮下 忠昭

公開日:2017.06.01

 北海道は昨夏の台風10号を中心とした豪雨水害により甚大な損害を蒙った。道路・橋梁の災害に限定しても道と市町村あわせて、395箇所、約150億円に上っている。被災状況の特徴としては、河川の増水、蛇行による道路決壊が顕著で、橋梁でも橋台や橋脚の洗掘による損傷や桁の流失もさることながら、橋台背面の盛土や護岸が、濁流により大きく損傷し、道路としての態をなさない状況になっている箇所も少なからずみられた。災害からの立ち直り、合わせて同様の被害を起こさないため構造物復旧をどのように進めていくか、北海道建設部土木局の宮下忠昭道路課長に聞いた。(井手迫瑞樹)

 ――まず、昨年8月の北海道豪雨水害における道内の道路構造物の被災状況と被災の特徴を教えてください。また、他部局と連携して取り組んでいることがありましたら、お聞かせください。
 宮下課長 昨年8月17日から23日の1週間に3つの台風が次々と北海道に上陸し、その後台風10号の接近による大雨で、道内に非常に大きな災害が発生しました。とくに道央と道東を結ぶ国道274号日勝峠や道東自動車道(トマムIC~芽室IC)、JR石勝線が被災したことにより、大きな影響が出ました。道東道はNEXCOさんの尽力により3日間で開通し、一般国道が不通になっていたため無料化を行い、道央と道東の生命線を守りました。28年災害査定総計では、道と市町村あわせて、道路災害・橋梁災害が395箇所、約150億円の被害となります。道路災害が326箇所、約79億円、橋梁災害が69箇所、約71億円です。


大きな損傷を被った空知川沿いの橋梁


桁が一部流失したJR新得駅付近の鉄道橋

川が大きく蛇行しアバットを露出させている/どこに河岸があったのか分からない

 道路の被災状況の特徴としては、河川の増水、蛇行による道路決壊です。天人峡美瑛線では、忠別川と並行していた道路が約400mにわたり消失しました。増水により河川が蛇行して、川の水が道路にあたったためと考えられます。ここから道路が決壊して、道路の山側を水が流れていったのが、天人峡美瑛線の被災状況です。夕張新得線も川と並行していた道路の全断面が、断続的に決壊しています。これも増水で川が蛇行したことによるものです。忠別清水線でも川に接近している部分の道路が全断面で決壊しました。これら3つの河川は未改修(自然)河川でした。
 もうひとつの被災の特徴が、河川の増水にともなう橋台洗掘・倒壊や背面土砂流出です。川の異常出水で堤防を乗り越えて橋台の裏側から水が回り、洗掘・倒壊や背面土砂流出につながりました。主なものでは、清水大樹線の上美生橋・中島橋、夕張新得線の松平橋がそれで被災しました。
 今回の災害を踏まえた取り組みとしては、維持管理防災課では、北海道大学大学院工学研究院の萩原亨教授を座長とする「道路管理に関する懇談会」を設置しました。懇談会では、ソフト対策について検討を行い、「事前通行規制区間の設定―予防的な区間の検討」や「道路パトロールの強化―パトロール出動基準の見直し、パトロール時の視点改善」などの6項目を今後の対策として決定しています。また、河川砂防課では、ハードとソフトが一体となった緊急的な治水対策を「北海道緊急治水対策プロジェクト」として、28年度から31年度を目処に集中して実施していきます。国・道管理河川あわせて700箇所で、復旧を基本として河川改修を行います。
 ――改良復旧の方法としては、高堤防化や河床掘削などがありますが、どのようなものを想定していますでしょうか
 宮下 場所によると思います。ペケレベツ川、パンケ新得川、空知川の3河川については河川災害関連助成事業として行い、河川の拡幅をするため、橋長の延伸を行う予定です。具体的には北海道緊急治水対策プロジェクトに基づき、復旧を進めていきます。


北海道緊急治水対策プロジェクト

同規模災害で「壊れない」ことを
第一に復旧を進める

 ――道路損傷に対するソフト対策については先ほど述べられましたが、復旧や新設時のハード面では、今回の水害を教訓にしてどのように考えていますか
 宮下 被災した箇所は改めてそれを踏まえて検討をして、災害査定を行っています。道路がえぐられた箇所には護岸を設置するなど、同規模の災害が起きても大丈夫な査定申請をして、昨年12月末までに査定は完了しています。新設道路では今回の教訓を踏まえてどのようにするか考えていかなければなりませんが、現時点では、災害査定での工法で復旧をする予定です。
 ――最新の流量解析を使って改良設計を行うところもあると聞きましたが、北海道道庁さんとしては改良復旧をどのように行う予定でしょうか
 宮下 先ほどの天人峡美瑛線で言いますと、基本的には道路を守るための方法になりますし、抜本的には河川改修を考えないといけないと思います。今回の災害でどのように水があたり、どのように道路が壊れたかを、水の解析やシミュレーションを行って、さまざまなことを想定したうえで対策工法を決めている状況です。具体的には、通常の護岸でしたら連接ブロックを貼りますが、結構な巨石がぶつかってくるような状況でしたので、重力式擁壁でのり尻を抑えて、その上ののり面にブロックを貼る工法を採用しています。
 今後の検討としては、橋梁基礎については、地質だけを見るのではなく、流失の危険から橋梁を守るために杭基礎なども考えていかなければなりませんが、現段階ではまずは壊れないように守ることが先決だと考えています。
 ――橋長延伸を行う空知川など3河川以外で橋台が傾いているところの災害復旧をどのように考えていますか。また今回、背面盛土が流れたケースが非常に多く、それを防ぐためにコンクリートで抑えていくという話も出ていますが、基本的には同じ方法となりますか
 宮下 さまざまなケースがあると思いますが、堤防の位置を引いたり、現状の位置が問題ならば、それらも検討しなければいけないと思います。ただ、そもそも河川容量を超えて道路の構造物としてつくるのかといった思いもあります。
 ――事前対策として、背面盛土が流れるケースを考えて、新設では延長床版を採用する、あるいは補修盛土を災害用に大量に用意しておいて流出してもすぐに埋めることができるといったような、先ほどのソフト対策とハード対策の中間的なものは考えていますか
 宮下 橋台がどのようなメカニズムで洗掘されたかを検討したなかで、護岸を伸ばす対策はかなり行っていると思います。護岸が低かった、あるいは長さが足りなかったことで損傷が起きているならば、護岸の高さ、長さを伸ばすことによって防ぐことを災害申請のなかで申請を行って対処しています。今回のような災害が発生したときに、同じ損傷が起きないようにすることが重要です。

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