施工中の大規模橋梁上部工は32橋、トンネルは5工事を施工中
――今年度施工中の主な橋梁、トンネルは
望月 東海環状自動車道、⻄知多道路、熊野道路、三遠南信自動車道、中部縦貫自動車道の5事業における、現在発注済み・施工中の主な橋梁(橋長100m以上)は合計すると32橋に及びます。同じく、トンネル工事としては5工事発注しており500m以上のトンネルは4トンネルが施工中です。
施工中橋梁一覧
施工中トンネル一覧
川島大橋 権限代行で架替え進む
――特徴ある橋梁を挙げて下さい
望月 まず川島大橋があげられます。同橋は岐阜県が管理する一般県道松原芋島線の木曽川渡河部に架かっていた橋梁ですが、2021年5月の豪雨により、橋脚に洗掘による傾斜などの被害が発生したため、権限代行によって中部地方整備局で架替えを進めています。
豪雨被害の経験を踏まえて、旧橋は4基であった河川内橋脚数を1基とし、橋長約360mの鋼2径間連続アーチ橋(ローゼ形式)を採用しています。現在は既設橋脚の撤去、新設橋脚および橋台の施工、鋼桁の工場製作を進めています。
川島大橋架替え概要図
川島大橋下部工の進捗状況
また、東海環状自動車道では、特徴的な橋梁として、施工は終えていますが、津屋川橋があげられます。同橋は橋長574mの鋼5径間連続鋼床版箱桁橋ですが、河川や道路、養老鉄道、中部電力高圧線など、交差するインフラが多くあり、架設地点に大型クレーンが配置できないことから、陸上部としては国内最長となる658m(手延べ桁含む、本桁部は中央3径間の421m)の送出しを行いました。送出し鋼重は875tと大きく、さらに支間長は最大で159m、縦断勾配は5%、横断勾配は3%、曲線半径は1,100mと厳しい条件でした。送出し施工は急速施工が可能となるダブルツインジャッキとPCケーブルを用いて桁をけん引し、各支点上に設置したエンドレス滑り装置を用いて、桁の反力を支持しつつ送り出しました。
津屋川橋架設状況(近景)
津屋川橋架設状況(遠景)
同橋は桁の外面に横桁が張出す形で、支承に桁を載せていますが、その横梁は曲線が厳しい現場であり、架設時には邪魔になることから、架設後に横梁を溶接した上でジャッキダウンし、支承上に載荷しました。
困難な施工だった青崩峠トンネル
――トンネルは
望月 現在施工中のトンネルは全てNATMを採用しています。
特徴的なトンネルは、やはり青崩峠トンネルです。青崩峠は、日本を二分する中央構造線上にあります。同峠付近は中央構造線の影響を受けた脆弱な地盤となっており、その対策として二重支保工などを採用して施工しています。2023年5月26日に貫通しており、現在は覆工などの施工を進めています。
――施工品質の向上やLCC縮減などの点から進めている施策は
望月 鋼橋のLCC縮減については、道路橋示方書の諸基準の他、当整備局の「道路設計要領:橋梁の長寿命化」の規定に基づき設計しています。
――建設分野で用いている独自の技術・材料がありましたらお示しください
望月 当地整でもDXの取組を進めており、インフラDXセンターや中部DXソーシャルラボを整備し、建設現場の生産性向上、働き方改革を進めています。
国道1号熱田伝馬橋架替え 仮橋を設置して半断面ずつ施工
アプローチの盛土部分も補強
――架替中の橋梁がありましたら教えてください
望月 まず、国道1号熱田伝馬橋架替事業があります。同橋は1950年に架設された橋梁であり、架設後73年が経過しています。同橋は現在の国道1号の橋梁の中で、最も古い橋齢となっています。老朽化も進み、耐震性能的にも課題があることから、2008年度から事業化し、架替えを進めています。現在は上り線側に仮橋を設置し、現橋の上り線を下り線として使用して、現橋の下り線の撤去を進めている状態です。
熱田伝馬橋概要図/熱田伝馬橋の切り回し道路イメージ
――下部工から架替えているのですか
望月 現橋は、下部工から撤去します。新橋の基礎形状は、地質を含めた現場条件より鋼管杭を採用しています。
また、同事業は橋梁だけでなく周辺の盛り土部も含めた事業としています。これは盛り土部の地盤に液状化の傾向があり、耐震性に課題があることから排水機能付き鋼矢板を打設することで、液状化しにくくする対応を施しています。
盛土部(液状化対策の鋼矢板)
橋梁 50年以上経過は39% トンネルは同27%
橋梁は5,561橋、トンネルは全体143箇所を管理
――次に保全の話題ですが、現在の管内橋梁・トンネルの内訳から教えてください
望月 橋梁から申し上げますと、当整備局で管理する2m以上の橋梁は5,561橋に及びます。橋種別は鋼橋が1,821橋(33%)、RC橋2,209橋(40%)、PC橋1,531橋(27%)となっています。
橋長別では、2m以上15m未満の小規模な橋梁が2,760橋とほぼ半数を占める一方で、100m以上の長大橋も1,049橋と2割近くに達しています。
供用後50年以上を経過している橋梁は現在39%ですが、10年後に61%、20年後には75%まで増加する見込みで、適切な対応が必要です。
トンネルは、全体143箇所を管理しています。工種別ではNATMが84本(59%)、矢板工法が58本(40%)となっています。他、開削トンネルが1本あります。
1km以上の長大トンネルは42箇所で29%を占めます。50年を超えるトンネルは現在27%ですが、20年後には48%までに増える見込みです。
――橋梁とトンネルの定期点検結果の内訳を教えてください
望月 2018~22年度の点検結果を申し上げますと、橋梁の健全性判定は健全性Ⅰが3,193橋(57%)、健全性Ⅱが1,832橋(33%)、健全性Ⅲが528橋(9%)となっています。その他初回点検前が8橋です。
Ⅲについては、鋼橋が373橋と70%に達しています。以下、PC橋が83橋、RC橋が72橋となっています。
トンネルは健全性Ⅰが7箇所(5%)、健全性Ⅱ106箇所(74%)、健全性Ⅲ30箇所(21%)です。
橋種別健全度割合
鋼橋は腐食による損傷が顕著 原因は防水・排水不良が大半
――点検を進めて見えてきた構造物の劣化・損傷状況を橋梁から教えてください
望月 鋼橋では健全度Ⅲが20%、健全度Ⅱも39%あり、腐食による損傷が顕著です。また、PC橋では健全度Ⅲが5%、健全度Ⅱが約33%で、剥離・鉄筋露出、うき、ひび割れが顕著です。RC橋は健全度Ⅲが3%、健全度Ⅱが29%で剥離・鉄筋露出、うきが顕著です。
橋種ごとの損傷種類
主桁の損傷状況(鋼橋、PC、RC)